直行直帰の多い営業職や、複数の現場を移動する従業員の勤怠管理では、「会社に出社しないため始業・終業時刻を確認しにくい」「申告された時刻が実際の勤務状況と合っているのか分からない」といった課題が生じることがあります。こうした社外勤務の勤怠管理に活用できるのが、スマートフォンなどの位置情報を利用したGPS打刻です。
GPS打刻を利用すると、従業員が打刻した時刻だけでなく、その時点の位置情報も記録できるため、直行直帰や外回りでも勤務状況を確認しやすくなります。一方で、位置情報の取得方法によっては、従業員から「行動を監視されている」と受け取られる可能性もあります。本記事では、GPS打刻の仕組みやメリット・デメリット、営業職や現場勤務での活用方法、プライバシーに配慮して導入するためのポイントを解説します。
GPS打刻とは、スマートフォンやタブレットなどの位置情報機能を利用し、出勤・退勤の打刻時刻とあわせて打刻場所を記録する仕組みです。従業員が勤怠管理システムのアプリやWeb画面から打刻すると、その時点の位置情報が勤怠データと紐づいて保存されます。
たとえば営業担当者が取引先へ直行する場合でも、現地で出勤打刻を行えば、管理者は「いつ」「どこで」打刻したのかを確認しやすくなります。オフィスに設置したタイムレコーダーまで戻る必要がないため、社外で働く従業員との相性が良い打刻方法です。
「GPSを使う」と聞くと、勤務中の行動が常に追跡されるイメージを持つかもしれません。しかし、GPS打刻には打刻した瞬間の位置情報だけを取得するタイプもあり、必ずしも勤務時間中の位置情報を継続的に記録する仕組みではありません。
位置情報を取得するタイミングや保存される情報は製品によって異なるため、導入前に仕様を確認することが重要です。勤怠管理が目的であれば、必要以上の位置情報を取得しない仕組みを選ぶことが、従業員のプライバシーへの配慮にもつながります。
勤怠管理システムによっては、位置情報を記録するだけでなく、あらかじめ設定した場所の周辺でのみ打刻を認める機能があります。事業所や店舗、工事現場などを打刻可能なエリアとして設定しておけば、勤務場所から大きく離れた地点での打刻を防ぎやすくなります。
こうした機能は一般にジオフェンシングなどと呼ばれます。ただし、GPSには一定の位置ずれが発生することもあるため、打刻可能範囲を狭く設定しすぎると、実際に勤務場所へ到着しているのに打刻できないケースも考えられます。運用する場所や端末で試したうえで設定することが大切です。
営業職のように直行直帰が多い職場では、従業員がオフィスへ立ち寄らないため、タイムカードなどによる勤怠管理が難しくなります。後日Excelへ勤務時間を入力したり、メールやチャットで始業・終業時刻を報告したりしている企業もあるでしょう。
GPS打刻を導入すれば、取引先や訪問先へ到着したタイミングで出勤し、業務を終えた場所から退勤するといった運用が可能です。勤務した本人がその場で記録できるため、後から勤務時間を思い出して申告する運用に比べ、記録の漏れや記憶違いを減らしやすくなります。
建設、設備保守、訪問サービスなど、その日によって勤務場所が変わる仕事でもGPS打刻を活用できます。現場へ直接向かう従業員が多い企業では、それぞれの現場へタイムレコーダーを設置するのは現実的ではありません。スマートフォンから打刻できれば、現場ごとに専用機器を用意する必要を減らせます。
派遣先や常駐先など、自社とは異なる場所で勤務するケースでも、位置情報付きの打刻記録があれば勤務状況を確認する際の参考になります。ただし、勤務地によって勤怠ルールが異なる場合もあるため、システムを導入するだけでなく、誰がどのタイミングで打刻するのかを明確にしておくことが重要です。
厚生労働省の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」では、使用者は労働者の労働日ごとの始業・終業時刻を確認し、記録することが求められています。原則として、使用者による現認や、タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間などの客観的な記録を基礎として確認することが示されています。
直行直帰や外回りでは管理者が出退勤を直接確認することが難しいため、スマートフォンからその場で打刻できる環境を整えることは、勤怠記録を残しやすくする方法の一つです。ただし、GPSに記録された位置だけで労働時間そのものを判断できるわけではありません。打刻時刻や勤務予定、申請内容なども確認し、実際の勤務状況に沿って労働時間を管理する必要があります。
一般的なスマートフォン打刻は、インターネットへ接続できれば場所を問わず操作できる場合があります。そのため、本人がまだ勤務場所へ到着していないにもかかわらず出勤打刻をするといった不適切な運用が起こる可能性があります。
GPS打刻なら打刻時の位置を確認できるため、勤務場所から大きく離れた場所での打刻に気付きやすくなります。指定エリア外からの打刻を制限できる機能と組み合わせれば、さらに管理しやすくなるでしょう。ただし、GPSの誤差や急な勤務地変更も考えられるため、位置情報が異なるという理由だけで不正と判断しないことも重要です。
外勤者の勤怠をメールやExcelで管理していると、月末に申告内容を勤怠表へ転記したり、未入力者へ確認したりする作業が発生します。従業員数や拠点数が増えるほど、人事・労務担当者の負担も大きくなります。
GPS打刻に対応した勤怠管理システムを利用し、出退勤記録を一元管理すれば、紙やExcelからデータを転記する作業を減らせます。打刻漏れや勤務予定との相違を確認できる機能があれば、月末にまとめて確認するのではなく、問題が起きた段階で修正する運用もしやすくなります。
GPSによる位置情報は、常に正確な地点を示すとは限りません。建物の中や地下、周囲に高い建物がある場所などでは、実際の位置からずれて表示される場合があります。また、端末側で位置情報機能がオフになっていたり、通信環境が不安定だったりすると、位置情報を取得できないこともあります。
そのため、「登録した現場から少しでも外れていたら打刻不可」といった厳しい設定にすると、正常な勤務にもかかわらず打刻できない可能性があります。導入前に実際の勤務場所で動作を確認し、GPSを取得できない場合の代替打刻や修正申請の方法も決めておくと安心です。
GPS打刻には、位置情報を取得できるスマートフォンやタブレットなどが必要です。会社から端末を支給するのか、従業員の私物端末を利用するのかによって、導入コストや運用方法も変わります。
特に私物のスマートフォンを利用する場合は、アプリのインストールや位置情報機能の利用に抵抗を感じる従業員も考えられます。端末や通信費の扱いを含め、導入前に会社としてのルールを整理し、従業員へ説明しておきましょう。
企業側が勤怠管理を目的として導入していても、従業員から見れば、自分の居場所を会社に把握される仕組みでもあります。取得する範囲や目的が分からなければ、「勤務中ずっと監視されるのではないか」「休日にも位置情報を取得されるのではないか」と不安を感じる可能性があります。
GPS打刻は機能だけを導入するのではなく、なぜ位置情報が必要なのかを従業員へ説明し、取得する情報を必要な範囲に限定することが重要です。利便性だけでなく、従業員が納得して利用できる運用まで含めて検討しましょう。
GPS打刻を導入するときは、まず位置情報を何のために利用するのかを明確にします。勤怠管理が目的であれば、「始業・終業時刻と勤務場所を確認するため」など、実際の利用目的に沿って整理しておきましょう。
個人情報保護委員会は、従業員の個人情報を取り扱う場合にも、その利用目的をできる限り特定する必要があるとしています。また、従業員を対象としたモニタリングについても、目的をあらかじめ特定して社内規程などに定め、従業員へ明示することなどを留意点として挙げています。「勤怠管理のために導入した位置情報を別の目的で安易に利用しない」という意識が大切です。
勤怠管理に必要なのが打刻時の位置情報だけであれば、勤務中の移動経路まで継続的に取得する必要性は低いでしょう。取得する情報が多くなるほど管理するデータも増え、従業員の心理的な負担につながる可能性があります。
どのタイミングで位置情報を取得するのか、誰が閲覧できるのか、どのような場合に確認するのかをあらかじめ決めておきましょう。管理者であれば誰でも自由に閲覧できる状態ではなく、勤怠確認に必要な担当者へ権限を限定するなど、適切に管理できる仕組みを整えることが重要です。
GPS打刻を突然導入すると、従業員が「会社から信用されていない」と感じてしまう可能性があります。導入目的が不正の監視ではなく、直行直帰でも正確に勤怠を記録できる環境を整えることだと説明することで、受け止め方も変わります。
取得する位置情報の範囲や利用目的、閲覧権限、打刻できなかった場合の対応などを整理し、運用開始前に周知しましょう。GPSを導入すること自体ではなく、位置情報をどのように扱うかまでルール化することが、安心して利用してもらうためのポイントです。
GPS打刻が便利だからといって、すべての従業員に同じ方法を利用させる必要はありません。営業職はスマートフォンによるGPS打刻、オフィス勤務者はPCやICカード、店舗では共有端末といったように、働く場所に応じて打刻方法を使い分けた方が運用しやすいケースもあります。
システム選定ではGPS機能だけを見るのではなく、自社に必要な複数の打刻方法を一つのシステムで管理できるかを確認しましょう。勤務形態が異なる従業員のデータをまとめて集計できれば、人事担当者の管理負担も抑えられます。
営業先のビルや地下の作業現場などでは、GPSを正常に取得できないケースも考えられます。GPS情報を取得できなければ一切出勤できないシステムでは、従業員だけでなく、その修正を行う管理者の負担も増えてしまいます。
GPSを取得できなかったときに通常の打刻へ切り替えられるか、後から理由を添えて修正申請できるか、管理者が確認・承認できるかなどを確認しておきましょう。実際の勤務場所で試験運用し、現場で問題なく使えることを確かめてから対象者を広げる方法も有効です。
GPS打刻は勤怠管理システムの機能の一つにすぎません。実際に導入する際は、残業時間の集計、休暇管理、申請・承認、アラート、給与計算システムとの連携など、自社で必要な勤怠管理機能を総合的に比較する必要があります。
「GPSが使えるか」だけで製品を決めるのではなく、現在の勤怠管理でどのような作業に手間がかかっているのかを整理し、その課題をまとめて解決できるシステムを選びましょう。
GPS打刻は、スマートフォンなどから出退勤を記録し、その時点の位置情報も確認できる仕組みです。オフィスへ出社しない直行直帰の営業職や、勤務場所が日によって変わる現場スタッフなどでも、その場で勤怠を記録できるため、社外勤務の労働時間を管理しやすくなります。勤務場所以外からの不適切な打刻に気付きやすくなることや、紙・Excelによる申告や転記を減らせることもメリットです。
一方で、GPSには位置情報の誤差があり、取得した場所だけで実際の労働時間や不正の有無を判断することはできません。また、位置情報は従業員の行動に関わる情報でもあるため、利用目的や取得範囲、閲覧権限などを明確にし、従業員へ十分に周知することが重要です。GPSを従業員の行動を監視するためではなく、社外でも正確に勤怠を記録しやすくするための手段として活用することを意識し、自社の働き方に合った勤怠管理システムを選びましょう。
ここでは、勤怠管理システムの導入にあたってよくある3つの課題ごとに、それぞれオススメのシステムを紹介します。
※引用元:キンタイミライ公式HP
(https://kintaimirai.jp/)
タップすると各機能の説明が表示されます
「時間帯ごとの要員数」と「人件費予算」を同時に確認しながら、シフトの登録・調整を実施
1ヵ月60時間を超える時間外労働について、代替休暇を取得
指定した起算日に基づき、4週4休のチェックを実施し、必要に応じて休日出勤を割り当て
社会保険・36協定・長時間労働に関して、指定したルールに基づきアラート
振替出勤が発生してから指定期間が経過すると、休日出勤の割増賃金対象の時間数として自動精算
その企業固有の集計方法をきめ細かに設定し、集計を自動化
集計結果を含んだ出勤簿をPDF形式で出力
日々の勤務実績に基づく人件費を計算し、締め日を待たずして人件費を把握可能
従業員のマスタ情報を1ヶ月単位で管理できるほか、CSV形式で一括して取得/編集/登録も可能
社員やバイト、パートといった従業員の属性別にカレンダーを設定できるほか、まるめ・集計機能との連動も可能
登録されたシフトに基づいて、遅刻早退を自動で判定
売上や生産高、処理量などの成果を入力し、その成果と勤務実績を対比させて、折れ線グラフで表示
※引用元:ジョブカン勤怠管理 公式HP
(https://jobcan.ne.jp/)
タップすると各機能の説明が表示されます
リアルタイムでスタッフの勤務状況の確認や拠点ごとの勤怠管理が可能
直感的な画面操作で簡単にシフトを申請・作成が可能
出勤管理機能やシフト管理機能と連動し、複雑な休暇管理を簡単に実施
スマホやタブレットでも、打刻・閲覧・各種申請などが可能
スタッフやタスクごとの工数集計やデータ出力・分析が可能
スタッフの勤務状況を自動集することが可能
時間外労働状を一覧で確認でき、36協定超過がある際は自動アラートでお知らせ
画面上の言語は、英語、韓国語、スペイン語、タイ語、中国語(簡体字・繁体字)、ベトナム語への切り替えが可能
医療現場の勤務形態に合わせた運用が可能
※引用元:マネーフォワード クラウド勤怠 公式HP
(https://biz.moneyforward.com/attendance/)
タップすると各機能の説明が表示されます
日次勤怠、勤怠確認、分析レポート、拠点別打刻集計、カスタム自動集計(数値集計)
役職階層、ワークフロー経路、申請ワークフロー、代理申請ワークフロー、受信ワークフロー
異動予約(役職)一覧、異動予約(就業ルール)一覧
有給休暇の自動付与、有給休暇付与予定一覧、有給休暇管理簿
不正な打刻・打刻漏れ、許可されていない打刻、無効な勤務パターン
打刻ごとの丸め設定、出勤・退勤・休憩の丸め設定、勤怠項目ごとの丸め設定、日ごと・月ごとの丸め設定、未申請の丸め設定、シフト範囲外打刻の丸め設定
従業員データ、日次勤怠データ、有給休暇利用実績、休暇付与データなどのインポート
従業員データ、月別データ、出勤簿データ、出勤簿データ、1ヶ月のシフト表、時間帯別のシフト表などのエクスポート
シフト管理、操作権限設定、ワークフロー通知、マネーフォワード クラウド給与との連携
※選定基準:
・キンタイミライ:Google検索「勤怠管理システム」でヒットした55製品の内、本番開発前のプロトタイプ開発および導入後の無料調整を唯一行っているシステムとして選出(2023年5月16日調査時点)。
・ジョブカン勤怠管理:Google検索「勤怠管理システム」でヒットした55製品の内、必要な機能を選んで価格が決まる製品で、機能が200種類と最も多い (2023年5月16日調査時点)。
・マネーフォワード クラウド勤怠:Google検索「勤怠管理システム」でヒットした55製品の内、一元管理できるバックオフィス業務のシステムが最も多い(2023年5月16日調査時点)。
ここでは、勤怠管理システムを乗り換えるにあたってよくある3つの課題ごとに、それぞれどういう基準でシステムを選ぶべきかを解説いたします。
既存のシステムでは自社のルールに合った管理でができておらず、手作業が発生しているなど、今のシステムに課題を抱えている企業もたくさんいらっしゃることでしょう。ホテル、運輸・倉庫、小売り、飲食といった、一般的なオフィスワーカーとは異なる勤務体系の業種に多いようです。
また企業規模が大きくなればなるほど従業員の雇用形態や労働形態が複雑になる上、高いコンプライアンスを求められることから、大企業を中心に既存システムでは対応しきれなくなるケースも散見されます。
上記のような課題を抱えている企業に必要なのは、「高いカスタマイズ性」を持つ勤怠管理システム。既存システムの機能では解決できない以上、自社仕様に機能を開発/調整してもらうほかありません。
このようなシステムを導入するにあたっては、細かいヒアリングを行った後、エンジニアが機能を調整してくれるため、痒い所に手が届くシステムになるでしょう。その分、既存のシステムよりもコストがかかりますが、従業員規模1,000名~といった大企業であれば 費用感は合うはずです。
機能の充実した勤怠管理システムを入れてはみたものの、運用を始めてみるとあまり使っていない機能があることに気が付くケースです。複雑な機能を用いて厳密に管理を行うというよりかは、選び抜いた機能だけのシンプルで低コストなシステムに乗り換えたいとお考えの中小企業も多いでしょう。
従業員からも、管理者からも直感的に使えないとの声が上がったり、実際にエラーが頻出しているケースもあるようです。
上記のような課題を抱えている企業に必要なのは、「機能を選んでコスパ良く使える」勤怠管理システム。「出勤管理機能」「休日申請機能」だけで良い企業もあれば、「シフト管理機能」も欲しい企業もあるでしょう。
企業の規模や労務管理の方法などによって、欲しい機能は異なるのが普通。機能を厳選することで、従業員にとってもシンプルで使いやすく、経営者にとってもコスパの良いシステムとなるのです。
事業の拡大に伴って従業員は増えるものの、労務管理を行う人数は増えていかず、管理する現場では負担が増える一方。既存のシステムでは勤怠とその他バックオフィスシステムを別々に導入しているため、うまく連携できていないという課題を持つ企業もいらっしゃることでしょう。
ベンチャー企業などにおいては、上場を視野に入れてバックオフィス業務を一気に統制していきたいというケースもあるようです。
上記のような課題を抱えている企業に必要なのは、「バックオフィス業務を一元管理できる」勤怠管理システム。「勤怠管理」だけでなく「給与」「会計」「経費」「人事管理」など、複数のバックオフィスシステムを展開しているシステムから、自社が必要なシステムを組み合わせて乗り換えると良いでしょう。
当然連携することを前提に開発されている為「リアルタイムでの数値同期」などで税理士との連携を行いながら、より効率的にバックオフィス業務を遂行することが可能です。