フレックスタイム制は労働基準法によって定められている制度であり、1日の労働時間の長さを一律に固定化するのでなく、3ヶ月以内の一定期間における総労働時間をあらかじめ決めておき、その範囲内において各従業員が己の裁量によって出勤時間や退勤時間などを決定できる勤務スタイルです。このページでは、フレックスタイム制における勤怠管理についてまとめました。
フレックスタイム制は一般的に出勤時間や退勤時間を従業員が個々の判断で決められる勤務スタイルであり、現在は労働基準法32条の3によってきちんと制度として明文化されているルールでもあります。
フレックスタイム制は1日8時間といった1日ごとの労働時間を固定せず、3ヶ月以内の総労働時間を法律にもとづいて決定しておき、その範囲内で従業員が自ら各労働日の労働時間を決められるという制度です。これにより従業員が己の意思でライフワークバランスを考えやすくなるとされます。
コアタイムとは、各労働日において1日の内で必ず仕事をしなければならない時間帯を指しており、フレックスタイム制を導入している企業において同時にコアタイムを設定しているといったケースも少なくありません。
そもそもフレックスタイム制は従業員にとって自由な勤務スタイルを叶えられますが、個々の都合でばらばらな働き方をされると会社として事業の安定性を欠いてしまうおそれも。そのためコアタイムを設定して、従業員の連携や事業の基盤を強化するといった取り組みを考えます。
ただしコアタイムはフレックスタイム制に関連して義務づけられている制度でなく、業種や業態によってはコアタイムを導入しないフレックスタイム制を採用している企業もあるでしょう。
フレックスタイム制のメリットは、何よりも従業員がそれぞれ自分で働く時間や働き方を決められる点です。これにより、例えば朝が苦手な人であれば昼出勤や午後出勤を考えられたり、前日に夜更かしなどをした際には翌朝の出勤時間を後ろへずらしてゆっくりと出社したりといった働き方を検討できます。
また、日々の労働時間や勤務時間を会社や上司から一方的に押しつけられないことで、従業員が自ら考えて働くモチベーションを高められるといった点もメリットです。
その他にも、通勤に電車やバスといった公共交通機関を利用している人の場合、世間一般のラッシュアワーを回避することで通勤時間をリラックスして過ごせるといった強みもあります。
フレックスタイム制のデメリットは、オフィスや事業所へ複数の従業員が一度に集合しづらいという点です。これにより会議のスケジュールを調整しにくかったり、チームで協力して仕事をしなければならない時にも連携が取りにくかったりといったデメリットが生じやすくなります。
また、他の人へすぐに情報や資料を確認してもらいたいような場合も、その相手が出社していなければ待たなければならず、作業の進捗が遅れやすくなるといった問題もあります。
その他、フレックスタイム制では全従業員に対して一律の勤怠管理を行いにくく、総労働時間の超過を防ぐためにも、個々の出勤・退勤時間をそれぞれ把握して管理する勤怠管理システムや業務フローの導入が必須です。
フレックスタイム制を導入する場合、あらかじめフレックスタイム制を採用している旨を就業規則として明記しておかなければなりません。そのため、会社や従業員が勝手にフレックスタイム制を利用して働き方を急に変えることは法的にNGです。なおフレックスタイム制の導入に際しては就業規則へその旨を規定として追加し、管轄の労働基準監督署へ届け出て認められるといった手続きが必要です。
ただし事業規模として従業員の数が10人未満であり、特段の就業規則を定めていないような場合、就業規則に準ずる規定を利用することができ、届出の必要もありません。
また従業員の過半数で組織された労働組合がある場合、または組合の代わりに従業員の過半数を代表する者がいる場合、会社はそれらと協議を行ってフレックスタイム制に関する労使協定を締結しなければならないことも重要です。なお労使協定に関しては労働基準監督署へ届け出る必要はありません。
フレックスタイム制の導入割合・導入率に関しては、そもそも業種や業態によって大きく異なる点が重要です。
例えば、事前に設定された時間帯や工期内での作業が不可欠な建築業界ではそもそもフレックスタイム制による働き方は適していません。一方、納期やノルマはあるものの個人での作業がメインとなるエンジニアやプログラマーといったIT関係の労働者であれば、フレックスタイム制を採用することで能率的に働きやすくなることもあるでしょう。
厚生労働省の令和3年就労条件総合調査ではフレックスタイム制を導入している企業の割合は全体の3.87%となっており、導入率が最も多い業種は「IT・通信」となりました。
フレックスタイム制を健全かつ適正に導入して勤怠管理を行うには、まず各従業員の勤務状況や出勤・退勤のタイミングなどを全て正確に把握できなければなりません。
そのため全従業員の勤怠管理をデータ収集して視覚化し、それぞれの従業員の勤務時間や総労働時間における残りの就労可能時間などを一目で分かるようにマネジメントする体制が必要です。
また労働時間を超過したり、逆に労働時間が不足したりしそうな場合、管理者や従業員へ通知できるようなシステムの導入も重要でしょう。
フレックスタイム制を導入したことによって事業の生産性が向上したのか、それとも変化していないのか、あるいは低下したのかといった点も客観的に分析して評価することが大切です。
そもそも企業や従業員の業務に対してフレックスタイム制が悪影響を及ぼす場合、導入し続ける価値や必要性はありません。
フレックスタイム制による生産性や従業員の意識などを調査して、具体的なメリット・デメリットを明確化することが大切です。
限られた人数の従業員しか所属していない事業所の場合、手作業でフレックスタイム制を管理することも不可能ではないでしょう。しかしそのためには正確な勤怠管理が必須であり、簡単にごまかせないような制度設計が必要です。
結論として、フレックスタイム制の勤怠管理は制度に対応したシステムを導入し、不正やミスが生じにくいようシステムで管理することが無難です。
システムを活用しないフレックスタイム制では、各従業員の出勤時間や退勤時間を正確にチェックすることが難しくなります。また退勤処理を行った後で従業員を働かせるといった不正な労働管理が行われるかも知れません。
加えて、従業員同士で出社のタイミングが把握しづらくなることで、業務の連携や効率が低下するといったリスクもあります。その他にも従業員が自分の累計労働時間を把握できない恐れもあるでしょう。
フレックスタイム制で起こり得る問題を回避してリスクを軽減するためには、出勤や退勤の処理と勤怠管理システムを連携させて人の出入りや労働時間を把握すると共に、管理者と従業員が互いの業務時間をチェックして、過不足なく働けるような情報共有体制が不可欠です。
フレックスタイム制は現代的な働き方の多様化を尊重する方法として有効な制度ですが、制約も少なくありません。実際に制度を導入するには事前の協議や労働基準監督署への届出といった手続きだけでなく、自社の事情に合わせて従業員の勤怠管理を適正に実行できるシステムや業務フローの導入もきちんと検討することが大切です。
ここでは、勤怠管理システムの導入にあたってよくある3つの課題ごとに、それぞれオススメのシステムを紹介します。
※選定基準:
・キンタイミライ:Google検索「勤怠管理システム」でヒットした55製品の内、本番開発前のプロトタイプ開発および導入後の無料調整を唯一行っているシステムとして選出(2023年5月16日調査時点)。
・ジョブカン勤怠管理:Google検索「勤怠管理システム」でヒットした55製品の内、必要な機能を選んで価格が決まる製品で、機能が200種類と最も多い (2023年5月16日調査時点)。
・マネーフォワード クラウド勤怠:Google検索「勤怠管理システム」でヒットした55製品の内、一元管理できるバックオフィス業務のシステムが最も多い(2023年5月16日調査時点)。
ここでは、勤怠管理システムを乗り換えるにあたってよくある3つの課題ごとに、それぞれどういう基準でシステムを選ぶべきかを解説いたします。
既存のシステムでは自社のルールに合った管理でができておらず、手作業が発生しているなど、今のシステムに課題を抱えている企業もたくさんいらっしゃることでしょう。ホテル、運輸・倉庫、小売り、飲食といった、一般的なオフィスワーカーとは異なる勤務体系の業種に多いようです。
また企業規模が大きくなればなるほど従業員の雇用形態や労働形態が複雑になる上、高いコンプライアンスを求められることから、大企業を中心に既存システムでは対応しきれなくなるケースも散見されます。
上記のような課題を抱えている企業に必要なのは、「高いカスタマイズ性」を持つ勤怠管理システム。既存システムの機能では解決できない以上、自社仕様に機能を開発/調整してもらうほかありません。
このようなシステムを導入するにあたっては、細かいヒアリングを行った後、エンジニアが機能を調整してくれるため、痒い所に手が届くシステムになるでしょう。その分、既存のシステムよりもコストがかかりますが、従業員規模1,000名~といった大企業であれば 費用感は合うはずです。
機能の充実した勤怠管理システムを入れてはみたものの、運用を始めてみるとあまり使っていない機能があることに気が付くケースです。複雑な機能を用いて厳密に管理を行うというよりかは、選び抜いた機能だけのシンプルで低コストなシステムに乗り換えたいとお考えの中小企業も多いでしょう。
従業員からも、管理者からも直感的に使えないとの声が上がったり、実際にエラーが頻出しているケースもあるようです。
上記のような課題を抱えている企業に必要なのは、「機能を選んでコスパ良く使える」勤怠管理システム。「出勤管理機能」「休日申請機能」だけで良い企業もあれば、「シフト管理機能」も欲しい企業もあるでしょう。
企業の規模や労務管理の方法などによって、欲しい機能は異なるのが普通。機能を厳選することで、従業員にとってもシンプルで使いやすく、経営者にとってもコスパの良いシステムとなるのです。
事業の拡大に伴って従業員は増えるものの、労務管理を行う人数は増えていかず、管理する現場では負担が増える一方。既存のシステムでは勤怠とその他バックオフィスシステムを別々に導入しているため、うまく連携できていないという課題を持つ企業もいらっしゃることでしょう。
ベンチャー企業などにおいては、上場を視野に入れてバックオフィス業務を一気に統制していきたいというケースもあるようです。
上記のような課題を抱えている企業に必要なのは、「バックオフィス業務を一元管理できる」勤怠管理システム。「勤怠管理」だけでなく「給与」「会計」「経費」「人事管理」など、複数のバックオフィスシステムを展開しているシステムから、自社が必要なシステムを組み合わせて乗り換えると良いでしょう。
当然連携することを前提に開発されている為「リアルタイムでの数値同期」などで税理士との連携を行いながら、より効率的にバックオフィス業務を遂行することが可能です。