法令違反リスクを防ぐための
勤怠管理システムの選び方

働き方改革など労働者の多様な働き方を支援する社会の仕組みが重視される中、働き方改革関連法や労働基準法の改正などによって、従来の業務管理や勤怠管理の方法では法令違反になるリスクも増大しています。また、勤怠管理システムを導入しても適切な運用が行われなければ、やはり問題の是正は困難でしょう。

このページでは、勤怠管理システムの導入によってコンプライアンスに関連した体制を強化し、法令違反リスクを低減していくためのポイントについて解説します。

法令違反リスクが高い状況とは

勤怠管理や労働環境に関する法令違反リスクは様々にありますが、特に法令違反の危険性が高まってしまうケースや場面を事前に把握しておくことはリスクマネジメントとして重要です。

ここでは、業種・業態を問わず、勤怠管理に関して法令違反リスクが高まる状況と対策をご紹介します。

打刻方法が1つしかない

例えばオフィスや作業場・工場などが敷地内に点在していたり、社内業務と社外業務が様々に分けられ、それぞれの場所や環境で勤務する従業員がいたりする場合、勤怠管理に関する打刻方法や管理場所が既存の業務環境にマッチしていなければ、実際の勤務時間や就労時間と、システム上に記録されている時間との間に差違が生じてしまうかもしれません。

また、リモートワークによる作業や、事前に外回り仕事を済ましてから事業所へ出社するといった場合、勤務時間に関して従業員の自己申告に任せてしまうこともあるでしょう。

従業員の作業環境や勤務形態ごとに適切な打刻方法が採用されていなければ、正確に勤務時間を把握できなくなり、法令違反リスクを高める要因になってしまいます。

残業アラートの設定が自社にあっていない

残業時間についても働き方改革関連法などによって規制が強化されており、規定の残業時間を超過してしまいそうな従業員がいた場合、システムによって警告する「残業アラート」を利用することも効果的です。

しかし、残業アラートのタイミングなどはシステムの種類や設定によって変わってくるため、警告を発する時間設定が自社の残業形態などとマッチしていなければ、アラートがなった時点では手遅れになってしまうといった恐れもあるでしょう。

また、残業超過のリスクについてシステムが自動的に検知してくれるのか、それとも手作業で残業超過リスクのある従業員をリストアップしなければならないのかといった点も重要です。

その他、アラートが管理者だけに通知されるのか、従業員にも通知されるのかといったことも運用方法を考える上で要チェックとなります。

有休取得状況を把握できない・把握しづらい

有給休暇制度に関しては、2019年から企業に対して「年次有給休暇の取得義務」が課せられており、現在は企業として従業員へ有給休暇の取得を促し、社内体制として有休を取りやすい風土づくりを進めることが不可欠になっています。一方、企業が建前として有休取得や有休消化をアピールしても、実際に従業員の間に有休を取りにくい空気や環境が整えられていなければ、従業員から有休取得を申請しづらいケースもあるでしょう。

そのため、年5日の有休取得が未達になりそうな従業員に対して、勤怠管理システムによって通知し、そもそも有休取得が必要であるという啓蒙を行っていくことも大切です。

また、誰がどの程度の有休取得を達成しているのか、視覚化することで管理者にとっても管理負担が軽減されます。

社員の不調（勤怠の乱れ）を把握できない

欠勤が続いているような従業員はもちろん、細かい遅刻が続いている従業員や、就労開始の時間や就業時間が不規則な従業員に関しても、各自の体調不良やメンタル面の疲労、過度な作業負担、その他にもプライベートな問題など色々なリスクが懸念されます。

そのため、社員の不調や勤怠の乱れといったポイントを管理者や企業として把握できているかどうかは、法令違反リスクや勤怠管理リスクを是正していく上で欠かせないポイントです。

特に、過去の勤怠状況と最近の勤怠状況を比較して、急に不規則さや勤怠の乱れが発生している場合、どうしてそのような事態が生じているのか原因についても把握していくことが肝要です。

勤怠管理システムの活用で従業員の勤怠リズムを比較参照し、リスクを早期発見できる環境を整えましょう。

労働時間を1分単位で把握できていない

労働時間の管理体制が30分単位や10分単位などになっている場合、細かなサービス残業などが従業員へ強いられてしまうリスクが高まります。そのため、原則として始業時間や終業時間、従業員の業務時間などは全て「1分単位」で管理できる体制を整えておかなければなりません。

しかし、手書きの勤怠シートや紙ベースの勤怠管理を改めてデータ入力するような場合、1分単位の勤怠管理を行おうとすると、現実的に時間の計算が複雑になってミスが発生するリスクも高まります。

勤怠管理システムを導入する場合、1分単位の勤怠管理を行えることはもちろんとして、それぞれの業務時間についても自動的に計算できるものを選ぶことが大切です。

上司の承認を得ずに残業できるようになっている

日常的な業務の中で、就業時間内に作業を終えることが困難になり、突発的に残業が発生してしまうようなケースもあるでしょう。しかし、そのような際に上司や管理者の承認を得ることなく、従業員の判断で残業できるような体制では、正確な勤怠管理は困難となります。

また、フレックス制度を導入しているわけでもないのに、終業のタイミングを従業員が独自の判断で決められるような場合、そもそも適切な勤怠管理は行えません。

勤怠管理システムを導入して残業管理も適正化する場合、残業の可否について上司や管理者からの承認を得られるように設定し、さらに残業超過リスクも考慮しながら調整できるように整備することが肝要です。

なお、残業を従業員へ依頼する場合も、勝手に上司や管理者が残業を決定できないよう相互承認を導入することもポイントです。

高度プロフェッショナル制度に対応できていない

高度プロフェッショナル制度とは、一部の専門職で年収1,075万円以上の従業員に関して、労働時間の規制や時間外労働による割増賃金支払規定といった制限を解除するという制度です。高度プロフェッショナル制度を利用したい場合、従業員自身の同意を書面で確認した上で、労使委員会の決議を経て企業が申請するといった流れが必要となります。

高度プロフェッショナル制度によって認定された従業員と、一般の従業員はそもそも就労時間などに関するルールが変わります。一方で高度プロフェッショナル制度を利用する場合は対象社員の「健康確保措置」が企業に義務づけられており、一定のルールの中で勤怠管理を適正化しなければなりません。

そのため高度プロフェッショナル制度を導入する場合、勤怠管理システムでも一般従業員と制度対象の従業員を区別した上で、それぞれの勤怠管理を適正化する必要があります。

勤怠管理システムはカスタマイズのしやすさが大切

働き方改革関連法などの施行によって労働者保護のルールが厳格化されている一方、社会全体で様々な就労形態や雇用形態が広まっています。

そのため、勤怠管理のルールや運用方法に関しても、企業によって従業員の雇用の仕方や働き方が異なっていることを前提とし、さらに同じ企業でも従業員の属性や契約形態によって就労に関するルールが違う可能性を考慮しなければなりません。

勤怠管理システムを導入する場合、自社ニーズに合わせたカスタマイズで管理業務を適正化し、法令違反リスクを軽減しながら各従業員のライフワークバランスを維持していけるように、まずは製品の比較検討をきちんと行いましょう。

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