勤怠管理と工数管理は似ているようで、実は目的も役割も大きく異なります。勤怠管理は従業員の労働時間を正確に把握し、健康や権利を守る「守りの管理」。一方、工数管理はプロジェクトごとの作業時間を見える化し、収益性を高める「攻めの管理」です。本記事では、この2つの管理の違いと重要性、さらに一元管理と個別管理の特徴まで詳しく解説していきます。
勤怠管理とは、従業員の出勤・退勤時間、休憩、休日取得状況といった勤務状況を正確に記録し、管理することです。その最も重要な目的は、従業員の公正な待遇と健康を守ることにあります。労働時間を適切に把握することで、給与計算を正確に行い、サービス残業などの賃金未払いを防ぎます。また、長時間労働や休日出勤の実態を可視化し、過重労働を未然に防ぐことにも繋がります。
これは、従業員が心身ともに健康な状態で働き続けるための基盤となり、企業のコンプライアンス遵守と健全な職場環境の維持に不可欠です。単なる時間の記録ではなく、従業員の権利と健康を守るための重要な責務であると言えます。
適正な勤怠管理を行うためには、従業員の労働状況を多角的に把握する必要があります。法律で全ての項目が厳密に定められているわけではありませんが、一般的に以下の項目の管理が求められます。まず、基本となる「出勤時間・退勤時間」「休憩時間」です。これらから「合計労働時間」が算出されます。さらに、「出勤日・欠勤日」の記録はもちろん、「時間外労働(残業)」「深夜労働」「休日労働」といった割増賃金の対象となる労働時間も正確に分けなければなりません。
加えて、従業員の休息を確保する観点から「有給休暇の取得状況」や「振替休日・代休の取得状況」も管理することが重要です。これらの項目を網羅的に管理することで、初めて適正な勤怠管理が実現します。
勤怠管理は、企業が任意で行うものではなく、法律によって定められた義務です。労働基準法に基づき、使用者は従業員の労働時間を正確に把握し、管理する責任を負っています。特に2019年4月に施行された改正労働安全衛生法では、「労働時間の適正な把握」がより明確に義務化されました。この改正により、原則としてタイムカードやICカード、PCのログなど、客観的な方法で出退勤時刻を記録・確認することが求められるようになりました。
自己申告制が認められるのは、やむを得ない場合に限られます。このように法的な義務を怠った場合、罰則の対象となるだけでなく、賃金未払いや過重労働といった労務リスクに直結します。コンプライアンスを遵守し、企業としての社会的責任を果たす上で、勤怠管理は極めて重要です。
工数管理とは、あるプロジェクトや特定の作業に対して、「誰が」「何に」「どれくらいの時間」をかけたのかを詳細に記録し、管理する活動を指します。勤怠管理が従業員の労働時間を管理するのに対し、工数管理は「作業時間の中身」を可視化することに主眼を置いています。
その最大の目的は、プロジェクトごとにかかる人件費を正確に把握し、採算性を明らかにして企業の利益を最大化することです。どの作業に時間がかかっているのか、どのプロジェクトが利益を生んでいるのかをデータに基づいて分析することで、業務プロセスの改善や適切な価格設定、リソースの再配分などが可能になります。従業員を守る勤怠管理とは異なり、工数管理は事業の成長と収益性を高めるための、攻めの管理手法と言えるでしょう。
工数管理を効果的に行うためには、作業時間を多角的な視点で記録する必要があります。把握すべき主な項目は、「どのプロジェクト」の「どのタスク(作業工程)」に、「誰が(担当者)」、「どれだけの時間(実績工数)」を費やしたかです。これにより、プロジェクト単位やタスク単位でのコスト計算が可能になります。さらに精度の高い管理を目指すためには、プロジェクト開始前に見積もった「予定工数」も重要な項目となります。
この予定工数と実績工数を比較する「予実管理」を行うことで、計画通りに進んでいるか、どこに遅延や問題が発生しているかを早期に発見できます。これらの項目を日々記録・蓄積していくことで、将来のプロジェクト計画や見積もりの精度向上にも繋がります。
工数管理は法律で義務付けられてはいませんが、企業の収益性を高める上で非常に重要です。その最大のメリットは、プロジェクトや作業ごとの人件費という、目に見えにくいコストを「見える化」できる点にあります。これにより、どの業務が利益を圧迫しているかを特定し、具体的な改善策を講じることが可能になります。また、プロジェクトの進捗状況をリアルタイムで把握できるため、納期の遅延や予算超過といったリスクを早期に察知し、対策を打つことができます。
さらに、蓄積された工数データは、将来の同種プロジェクトにおける正確な見積もりや人員計画の策定に役立ちます。従業員自身も時間に対するコスト意識が高まり、組織全体の生産性向上に繋がるというメリットもあります。
勤怠管理と工数管理を一つのシステムで完結させる「一元管理」には、入力の手間を大幅に削減できるという大きなメリットがあります。従業員は出退勤の打刻と同じシステムで工数入力を行えるため、複数のツールを立ち上げる必要がなく、入力漏れや二重入力のミスを防ぎやすくなります。また、勤怠データと工数データが常に連動しているため、労働時間と作業時間の合計に差異が生じた際にアラートを出すなど、データの整合性を保ちやすいのも特徴です。進捗状況をリアルタイムで把握しやすく、管理者の確認・集計作業も効率化できます。
一方で、デメリットとしては、システムの柔軟性に限りがある場合があります。勤怠管理機能は充実しているものの工数管理機能は簡易的、あるいはその逆といったケースがあり、自社の複雑な要件を完全に満たせない可能性があります。
勤怠管理と工数管理をそれぞれ専門のシステムで「個別管理」し、必要に応じてデータを連携させる方法もあります。このパターンの最大のメリットは、各分野で最も優れた、自社の要件に最適なツールを選定できる点です。例えば、複雑なシフト勤務に対応できる高機能な勤怠管理システムと、プロジェクトの予実管理や分析機能が豊富な工数管理ツールを組み合わせることができます。各部署が必要とする専門的な機能要件を満たしやすいのが強みです。
しかし、デメリットとして、従業員が二つのシステムに情報を入力する手間が発生します。また、システム間のデータ連携がスムーズに行えない場合、手作業での転記が必要になったり、データの不整合が生じたりするリスクも考慮しなければなりません。リアルタイムでの状況把握が一元管理に比べて難しくなる可能性もあります。
自社にどちらの管理方法が合っているか、以下の3つのポイントで考えてみましょう。まず1つ目は「管理業務の複雑性」です。フレックスタイム制や変形労働時間制といった多様な勤務形態があり、かつプロジェクトやタスクの管理も細かく行いたい場合は、それぞれの専門性が高い「個別管理」が適している可能性があります。
2つ目は「従業員の入力負担の優先度」です。とにかく日々の入力作業をシンプルにし、従業員の負担を最小限にしたいと考えるなら、入力の手間が少ない「一元管理」が向いています。
3つ目は「求める機能の専門性」です。厳格な労務管理や詳細なプロジェクト収益分析など、特定の機能に高い専門性を求める場合は、その分野に特化したツールを選べる「個別管理」の方が満足度は高くなるでしょう。これらの視点から自社の状況を整理することが、最適な選択への第一歩です。
本記事では、勤怠管理と工数管理の違いについて、それぞれの目的や管理項目、関係性を解説しました。
勤怠管理は、法律に基づき従業員の労働時間を正確に把握し、健康と権利を守るための「守りの管理」です。一方で工数管理は、プロジェクトごとのコストを可視化し、生産性と収益性を高めるための「攻めの管理」であり、両者は似ているようでその目的が根本的に異なります。
企業の健全な成長のためには、この二つの管理はどちらも欠かせません。勤怠情報と工数情報を連携させることで、長時間労働の原因特定やプロジェクトの採算性改善など、より高度なマネジメントが可能になります。
ここでは、勤怠管理システムの導入にあたってよくある3つの課題ごとに、それぞれオススメのシステムを紹介します。
※引用元:キンタイミライ公式HP
(https://kintaimirai.jp/)
タップすると各機能の説明が表示されます
「時間帯ごとの要員数」と「人件費予算」を同時に確認しながら、シフトの登録・調整を実施
1ヵ月60時間を超える時間外労働について、代替休暇を取得
指定した起算日に基づき、4週4休のチェックを実施し、必要に応じて休日出勤を割り当て
社会保険・36協定・長時間労働に関して、指定したルールに基づきアラート
振替出勤が発生してから指定期間が経過すると、休日出勤の割増賃金対象の時間数として自動精算
その企業固有の集計方法をきめ細かに設定し、集計を自動化
集計結果を含んだ出勤簿をPDF形式で出力
日々の勤務実績に基づく人件費を計算し、締め日を待たずして人件費を把握可能
従業員のマスタ情報を1ヶ月単位で管理できるほか、CSV形式で一括して取得/編集/登録も可能
社員やバイト、パートといった従業員の属性別にカレンダーを設定できるほか、まるめ・集計機能との連動も可能
登録されたシフトに基づいて、遅刻早退を自動で判定
売上や生産高、処理量などの成果を入力し、その成果と勤務実績を対比させて、折れ線グラフで表示
※引用元:ジョブカン勤怠管理 公式HP
(https://jobcan.ne.jp/)
タップすると各機能の説明が表示されます
リアルタイムでスタッフの勤務状況の確認や拠点ごとの勤怠管理が可能
直感的な画面操作で簡単にシフトを申請・作成が可能
出勤管理機能やシフト管理機能と連動し、複雑な休暇管理を簡単に実施
スマホやタブレットでも、打刻・閲覧・各種申請などが可能
スタッフやタスクごとの工数集計やデータ出力・分析が可能
スタッフの勤務状況を自動集することが可能
時間外労働状を一覧で確認でき、36協定超過がある際は自動アラートでお知らせ
画面上の言語は、英語、韓国語、スペイン語、タイ語、中国語(簡体字・繁体字)、ベトナム語への切り替えが可能
医療現場の勤務形態に合わせた運用が可能
※引用元:マネーフォワード クラウド勤怠 公式HP
(https://biz.moneyforward.com/attendance/)
タップすると各機能の説明が表示されます
日次勤怠、勤怠確認、分析レポート、拠点別打刻集計、カスタム自動集計(数値集計)
役職階層、ワークフロー経路、申請ワークフロー、代理申請ワークフロー、受信ワークフロー
異動予約(役職)一覧、異動予約(就業ルール)一覧
有給休暇の自動付与、有給休暇付与予定一覧、有給休暇管理簿
不正な打刻・打刻漏れ、許可されていない打刻、無効な勤務パターン
打刻ごとの丸め設定、出勤・退勤・休憩の丸め設定、勤怠項目ごとの丸め設定、日ごと・月ごとの丸め設定、未申請の丸め設定、シフト範囲外打刻の丸め設定
従業員データ、日次勤怠データ、有給休暇利用実績、休暇付与データなどのインポート
従業員データ、月別データ、出勤簿データ、出勤簿データ、1ヶ月のシフト表、時間帯別のシフト表などのエクスポート
シフト管理、操作権限設定、ワークフロー通知、マネーフォワード クラウド給与との連携
※選定基準:
・キンタイミライ:Google検索「勤怠管理システム」でヒットした55製品の内、本番開発前のプロトタイプ開発および導入後の無料調整を唯一行っているシステムとして選出(2023年5月16日調査時点)。
・ジョブカン勤怠管理:Google検索「勤怠管理システム」でヒットした55製品の内、必要な機能を選んで価格が決まる製品で、機能が200種類と最も多い (2023年5月16日調査時点)。
・マネーフォワード クラウド勤怠:Google検索「勤怠管理システム」でヒットした55製品の内、一元管理できるバックオフィス業務のシステムが最も多い(2023年5月16日調査時点)。
ここでは、勤怠管理システムを乗り換えるにあたってよくある3つの課題ごとに、それぞれどういう基準でシステムを選ぶべきかを解説いたします。
既存のシステムでは自社のルールに合った管理でができておらず、手作業が発生しているなど、今のシステムに課題を抱えている企業もたくさんいらっしゃることでしょう。ホテル、運輸・倉庫、小売り、飲食といった、一般的なオフィスワーカーとは異なる勤務体系の業種に多いようです。
また企業規模が大きくなればなるほど従業員の雇用形態や労働形態が複雑になる上、高いコンプライアンスを求められることから、大企業を中心に既存システムでは対応しきれなくなるケースも散見されます。
上記のような課題を抱えている企業に必要なのは、「高いカスタマイズ性」を持つ勤怠管理システム。既存システムの機能では解決できない以上、自社仕様に機能を開発/調整してもらうほかありません。
このようなシステムを導入するにあたっては、細かいヒアリングを行った後、エンジニアが機能を調整してくれるため、痒い所に手が届くシステムになるでしょう。その分、既存のシステムよりもコストがかかりますが、従業員規模1,000名~といった大企業であれば 費用感は合うはずです。
機能の充実した勤怠管理システムを入れてはみたものの、運用を始めてみるとあまり使っていない機能があることに気が付くケースです。複雑な機能を用いて厳密に管理を行うというよりかは、選び抜いた機能だけのシンプルで低コストなシステムに乗り換えたいとお考えの中小企業も多いでしょう。
従業員からも、管理者からも直感的に使えないとの声が上がったり、実際にエラーが頻出しているケースもあるようです。
上記のような課題を抱えている企業に必要なのは、「機能を選んでコスパ良く使える」勤怠管理システム。「出勤管理機能」「休日申請機能」だけで良い企業もあれば、「シフト管理機能」も欲しい企業もあるでしょう。
企業の規模や労務管理の方法などによって、欲しい機能は異なるのが普通。機能を厳選することで、従業員にとってもシンプルで使いやすく、経営者にとってもコスパの良いシステムとなるのです。
事業の拡大に伴って従業員は増えるものの、労務管理を行う人数は増えていかず、管理する現場では負担が増える一方。既存のシステムでは勤怠とその他バックオフィスシステムを別々に導入しているため、うまく連携できていないという課題を持つ企業もいらっしゃることでしょう。
ベンチャー企業などにおいては、上場を視野に入れてバックオフィス業務を一気に統制していきたいというケースもあるようです。
上記のような課題を抱えている企業に必要なのは、「バックオフィス業務を一元管理できる」勤怠管理システム。「勤怠管理」だけでなく「給与」「会計」「経費」「人事管理」など、複数のバックオフィスシステムを展開しているシステムから、自社が必要なシステムを組み合わせて乗り換えると良いでしょう。
当然連携することを前提に開発されている為「リアルタイムでの数値同期」などで税理士との連携を行いながら、より効率的にバックオフィス業務を遂行することが可能です。