裁量労働制は雇用する側とされる側であらかじめ一定の時間を定めておき、実際の労働時間でなく、事前に定めた時間を労働時間として給料計算を行って賃金を支払う制度です。このページでは裁量労働制に対応する勤怠管理について解説します。
裁量労働制は実際に労働者が働いた時間に対して賃金を支払うのでなく、あらかじめ労働時間などの条件を定めておき、そこで規定されている時間を労働時間と見なして賃金を支払う制度です。
言い換えれば裁量労働制は労働時間に応じて報酬を支払うのでなく、労働の成果に応じて報酬を支払う制度と言うことが可能です。
裁量労働制は多様な働き方を叶えられる方法の1つとされていますが、一方で過剰な負担を労働者へ強いるリスクもあり、厚生労働省では裁量労働制の適用可能業務を以下の2つに規定しています。
専門業務型裁量労働制は文字通り高度な専門性が求められる職種や業務において認められている裁量労働制であり、仕事の進め方や時間配分の管理などの大部分が労働者自身の裁量によって管理されるタイプの業務に適用されます。
具体的にはシステムエンジニアや研究者、弁護士、建築士、デザイナーといった業務が専門業務に当たり、厚生労働省では2024年3月時点で19の業務を該当業務として認めていることが重要です。
言い換えれば、該当業務として認められていない分野については専門業務型裁量労働制を適用することができません。
企業や組織の運営やマネジメント、経営に必要な調査や分析といったものを担当する業務が企画業務とされており、具体的には以下の4要件を全て満たしている業務が対象です。
例えば組織運営に必要な情報収集や分析業務を担当するとしても、上司や管理者から業務時間や業務の方法を指示されて従っている人については企画業務型裁量労働制を適用することができません。
裁量労働制のメリットは、一定の範囲内であれば労働者の裁量によって働き方や働く時間の配分を決められるというものであり、企業に労働者として雇用されながらもフリーランスや個人事業主のような働き方を叶えられるという点にあります。
そのため適切な成果を達成していれば一般的な労働者よりも実働時間を軽減しやすく、上手に活用することで個々の労働者が自分なりのライフワークバランスを整えやすいという点はメリットです。
裁量労働制は正しく活用することで、労働者として企業に保護された環境と自由な働き方を両立できる制度です。
裁量労働制のデメリットとして、成果主義への偏重を招きかねないというリスクがあります。また、労使間であらかじめ定めている条件や成果に対して報酬が支払われるという性質上、場合によっては長時間労働や過剰な負担が労働者へ強いられてしまうおそれもあります。
実際、厚生労働省が2021年に行った裁量労働制実態調査によれば、実際の労働時間を裁量労働制の適用者・非適用者で比較した場合、むしろ適用者の方が長時間労働になりやすいという傾向が認められました。
そのため、本当の意味で裁量労働制の制度趣旨に沿った目的を達成する場合、経営者と労働者の間で十分な話し合いや条件交渉を行い、互いが誠実かつ互いを尊重して業務体制を整えなければなりません。
裁量労働制を導入するためには所定の手続きを経なければならず、さらに2024年4月以降は法改正による制度の見直しがなされることも要チェックです。
2024年4月以降に新しく裁量労働制を導入したり、継続して裁量労働制を採用したりするためには、全ての事業所において以下の条件を守らなければなりません。
また上記の条件を全て満たしたうえで、労働基準監督署へ協定届・決議届を届出なければなりません。
2024年4月の制度改正は、厚生労働省が行った実態調査により発覚した、現実的に裁量労働制を適用している労働者において長時間労働が多くなっているという制度趣旨と実態とのねじれ現象がきっかけです。
そのため制度改正後は条件が追加で定められており、労使間の合意を得るだけでなく、労使委員会を設置して実際に適正な運用が行われているのか定期的に調査して、その結果を報告する必要があります。
裁量労働制では実働時間でなくあらかじめ労使間で定めた条件によって賃金が支払われるものの、一方で企業には労使委員会を設置して、実施状況の把握や運用上の問題点の改善などを行うことが義務化されました。
そのため、裁量労働制であっても適切な勤怠管理を実施して、実際の労働実態や労働時間を把握することが必須です。なお、特に企画型の裁量労働制では勤怠管理が重要となります。
裁量労働制であっても労働者は労働基準法によって保護される対象であり、休日や深夜の労働が必要になった場合は割増賃金が適用されます。
休日出勤や深夜労働、早朝労働といった働き方には法的に最低限の割増賃金の加算率が定められており、それらの条件を含めて契約内容を設定しなければなりません。
休日出勤や深夜・早朝の労働に対しては法的に割増賃金が認められている一方、裁量労働制は労働者が自分の労働時間の配分などを決められることがポイントです。つまり、無条件で労働者の休日出勤や深夜・早朝労働を認めてしまうと、企業側がより多くの賃金を負担しなければならなくなります。
そのため休日出勤や深夜・早朝労働には条件が定められており、例えば事前承認制を導入することで労使間の公平性を保つことが可能となります。
裁量労働制は個々の労働者によって働き方や実働時間が変わるため、勤怠管理システムを導入するとしても単純な管理システムでは対応が困難です。そのため、裁量労働制の適正な運用を実現するためには幅広いワークスタイルに対応できる勤怠管理システムを導入して、個々の労働者の労働実態を企業として的確に把握する必要があります。
2024年4月以降の裁量労働制では、以前よりもさらに労働者の労働状況の把握や実働時間の記録といった作業が経営者や企業側に求められるため、不十分な労務管理や勤怠管理を実施しては制度を利用できる条件に違反してしまうおそれがあるでしょう。
また、単に実働時間などを把握するだけでなく、休日出勤や深夜・早朝労働が発生した場合の割増賃金や代償休日の設定といった対応も必要になるため、より広範囲かつ詳細な勤怠管理を実施しなければなりません。
改正裁量労働制に対応した勤怠管理システムはこういったニーズや条件もカバーしており、労働基準法の定める義務や要件に違反するリスクを低減しながら、企業にとっても労働者にとってもメリットのある働き方を追求していけます。
裁量労働制は、制度趣旨として多様な働き方の実現を後押ししますが、実際にコンセプト通りの活用法が叶えられているかどうかはケースバイケースです。
そのため裁量労働制を導入する場合、改正前・改正後の制度の特徴や違いを理解し、自社のニーズや従業員の特性も考慮したうえで、適切な勤怠管理システムの導入といった運用体制の確立が大切です。
ここでは、勤怠管理システムの導入にあたってよくある3つの課題ごとに、それぞれオススメのシステムを紹介します。
※引用元:キンタイミライ公式HP
(https://kintaimirai.jp/)
※引用元:ジョブカン勤怠管理 公式HP
(https://jobcan.ne.jp/)
※引用元:マネーフォワード クラウド勤怠 公式HP
(https://biz.moneyforward.com/attendance/)
※選定基準:
・キンタイミライ:Google検索「勤怠管理システム」でヒットした55製品の内、本番開発前のプロトタイプ開発および導入後の無料調整を唯一行っているシステムとして選出(2023年5月16日調査時点)。
・ジョブカン勤怠管理:Google検索「勤怠管理システム」でヒットした55製品の内、必要な機能を選んで価格が決まる製品で、機能が200種類と最も多い (2023年5月16日調査時点)。
・マネーフォワード クラウド勤怠:Google検索「勤怠管理システム」でヒットした55製品の内、一元管理できるバックオフィス業務のシステムが最も多い(2023年5月16日調査時点)。
ここでは、勤怠管理システムを乗り換えるにあたってよくある3つの課題ごとに、それぞれどういう基準でシステムを選ぶべきかを解説いたします。
既存のシステムでは自社のルールに合った管理でができておらず、手作業が発生しているなど、今のシステムに課題を抱えている企業もたくさんいらっしゃることでしょう。ホテル、運輸・倉庫、小売り、飲食といった、一般的なオフィスワーカーとは異なる勤務体系の業種に多いようです。
また企業規模が大きくなればなるほど従業員の雇用形態や労働形態が複雑になる上、高いコンプライアンスを求められることから、大企業を中心に既存システムでは対応しきれなくなるケースも散見されます。
上記のような課題を抱えている企業に必要なのは、「高いカスタマイズ性」を持つ勤怠管理システム。既存システムの機能では解決できない以上、自社仕様に機能を開発/調整してもらうほかありません。
このようなシステムを導入するにあたっては、細かいヒアリングを行った後、エンジニアが機能を調整してくれるため、痒い所に手が届くシステムになるでしょう。その分、既存のシステムよりもコストがかかりますが、従業員規模1,000名~といった大企業であれば 費用感は合うはずです。
機能の充実した勤怠管理システムを入れてはみたものの、運用を始めてみるとあまり使っていない機能があることに気が付くケースです。複雑な機能を用いて厳密に管理を行うというよりかは、選び抜いた機能だけのシンプルで低コストなシステムに乗り換えたいとお考えの中小企業も多いでしょう。
従業員からも、管理者からも直感的に使えないとの声が上がったり、実際にエラーが頻出しているケースもあるようです。
上記のような課題を抱えている企業に必要なのは、「機能を選んでコスパ良く使える」勤怠管理システム。「出勤管理機能」「休日申請機能」だけで良い企業もあれば、「シフト管理機能」も欲しい企業もあるでしょう。
企業の規模や労務管理の方法などによって、欲しい機能は異なるのが普通。機能を厳選することで、従業員にとってもシンプルで使いやすく、経営者にとってもコスパの良いシステムとなるのです。
事業の拡大に伴って従業員は増えるものの、労務管理を行う人数は増えていかず、管理する現場では負担が増える一方。既存のシステムでは勤怠とその他バックオフィスシステムを別々に導入しているため、うまく連携できていないという課題を持つ企業もいらっしゃることでしょう。
ベンチャー企業などにおいては、上場を視野に入れてバックオフィス業務を一気に統制していきたいというケースもあるようです。
上記のような課題を抱えている企業に必要なのは、「バックオフィス業務を一元管理できる」勤怠管理システム。「勤怠管理」だけでなく「給与」「会計」「経費」「人事管理」など、複数のバックオフィスシステムを展開しているシステムから、自社が必要なシステムを組み合わせて乗り換えると良いでしょう。
当然連携することを前提に開発されている為「リアルタイムでの数値同期」などで税理士との連携を行いながら、より効率的にバックオフィス業務を遂行することが可能です。