変形労働時間制は、繁忙期と閑散期が区別されているような業種・職種などにおいて、1ヶ月の労働時間を平均化して1週間当たりの労働時間が法定労働時間を超えないように調整できる制度であり、一時的に法定労働時間を超えて働くことが可能となります。
このページでは、変形労働時間制やそれに対応する勤怠管理についてまとめました。
変形労働時間制とは、労働基準法によって定められている法定労働時間を1日単位でなく、週単位などで平均化して調整できる制度です。例えば、労働基準法では1日8時間、週40時間という法定労働時間が定められており、原則的にこれを超過して従業員などを働かせることはできません。
しかし、例えば月初めは閑散期で、月末が繁忙期になるような仕事の場合、変形労働時間制を活用して月初めの労働時間を短く抑えることで、月末に週40時間を超えて働いてもらうといったことが可能となります。
厚生労働省が発表した「令和4年就労条件総合調査の概況」によれば、令和3年の調査で変形労働時間制を採用していた企業はおよそ59.6%であったのに対して、令和4年調査では64.0%にまで増加しています。
変形労働時間制は働き方の多様化を促進する制度として、多くの企業に注目されていると考えられるでしょう。
変則的な労働時間の形態の1つとして、フレックスタイム制を導入している企業も増えています。
フレックスタイム制は3ヶ月を清算期間として設定した上で、一週間の週平均労働時間を40時間以内に抑えることを前提に、労働者が「始業・就業時間をフレキシブルに設定できる」という制度です。フレックスタイム制を採用している企業の場合、労働者は朝に出勤せず昼に出勤したり、日によって労働時間を変えたりといった自由なスタイルを追求できます。
一方の裁量労働制は、特定の労働時間や勤務時間を企業側が指定して従業員に出社させるのでなく、労使協定によって定めた時間分の賃金が労働者に支払われるという制度です。裁量労働制では実際の労働時間は賃金に影響しないため、自由な働き方を追求できる反面、残業しても賃金の割り増しなどもありません。
変形労働時間制では、平均労働時間の計算対象になる清算期間を「1年単位」・「1ヶ月単位」・「1週間単位」の3パターンから選択して採用することが可能です。
1ヶ月単位の変形労働時間制は、文字通り1ヶ月を清算期間として労働時間を平均化し、法定労働時間の総枠や、1週間当たりの労働時間が法定労働時間を超過しない範囲で、特定の労働日で法定労働時間を超えて働くことを認める制度です。
なお1ヶ月単位の変形労働時間制を採用する場合、労使協定や就業規則などによってあらかじめ「就業規則等の定め」を明文化しておかなければなりません。
1ヶ月単位の変形労働時間制を採用すると、例えば月初めの労働時間を週20時間程度に抑えて、月末の繁忙期では週50時間の労働を行うといったことが可能になります。
1年単位の変形労働時間制の場合、1ヶ月を超えて1年以内を清算期間として労働時間を平均化し、1週間当たりの労働時間が40時間以下となる範囲内で、1日8時間・1週40時間の範囲を超えて従業員に働いてもらえます。ただし、1年単位の変形労働時間制では他にも条件が定められており、一定の限度(1日10時間、1週52時間以内など)を超過して過剰に労働者を働かせることはできません。
なお、1年単位の変形労働時間制を採用するためには労使協定で特定の事項を定めておくことが必要となります。
従業員が30人未満で、小売業や旅館業、飲食店などの接客サービス業に限り、1週間単位で変形労働時間制を採用することが認められています。
これは天候や季節といった不確定要素で業務量が変化する上、労働者が少なく、突発的な従業員の休みなどによって代替人員の確保が難しいといった事業性に配慮している制度です。
労働時間は1日10時間、1週間当たり40時間の上限が定められていますが、就業規則によってあらかじめ始業時間や就業時間を設定する必要はありません。ただし、労働日の前週までにあらかじめ従業員へシフトを書面で通知することが必要です。
社会には様々な仕事があり、全ての業種・職種が9時~17時の働き方を行えるわけではありません。むしろ仕事によっては労働時間が変則的であったり、季節や時期によって繁忙期・閑散期が分かれていたりと、様々な個性や特徴があります。
変形労働時間制は、労働基準法によって労働者の権利や健康、安全を保護しつつ、働き方の多様化を実現するための制度として考えられています。そのため変形労働時間制を採用することで、幅広い働き方やライフワークバランスを整えやすくなり、企業や労働者にとっても事業を安定させつつ自由な生き方を追求しやすくなる点がメリットです。
変形労働時間制は適切に導入されればメリットの多い制度ですが、一方で単に「1日8時間を超えて従業員を働かせられる制度」といった安易な理解をしている事業主や雇用者がいることも事実です。
そのため、従業員の健康面や精神面について配慮することなく、雇用主として優位な立場を利用して労使協定を結び、会社の都合で1日10時間の労働を従業員へ強いるといった運用法が行われてしまうリスクもあります。
変形労働時間制はあくまでも労働者の権利を尊重しつつ多様な働き方をサポートするための制度であり、企業側の都合で労働者の働き方を強制するものではない点に注意してください。
変形労働時間制は導入する業種や企業によって、それぞれ独自の働き方や労働時間の設定法を検討する制度です。そのため、自社のニーズに合わせてカスタマイズできない勤怠管理システムを導入している場合、変形労働時間制に対応できないといったケースも少なくありません。
変形労働時間制を採用しているにもかかわらず、実態に即した勤怠管理をシステムで対処できなければ、システムによる作業の効率化や自動化を行うこともできません。
そのため自社の変形労働時間制に対応できない勤怠管理システムを使っている場合、改めて対応可能な勤怠管理システムへの乗り換えを検討することも大切です。
様々な事業を展開していたり、部署によって色々な働き方が必要になったりする大企業では、同じ会社内であっても変形労働時間制を採用している労働者とそうでない労働者が混在していたり、いっそ部署によって異なる変形労働時間制を採用していたりといったケースも考えられます。
そのため、画一的な労働スタイルだけでは対応できない大企業などの場合、カスタマイズ性に優れている勤怠管理システムを導入して、適材適所のマネジメント体制を確立していくことが肝要です。
変形労働時間制は多様な働き方を実現して、労働者の権利やニーズを尊重しながら企業としても積極的な事業運営を目指していく助けになる制度です。
ただし、変形労働時間制には色々と制限や規則もあり、何もかもを自由にできるわけではありません。そのためまずは変形労働時間制についてきちんと理解した上で、自社の事情に合わせた運用法や勤怠管理を検討していきましょう。
ここでは、勤怠管理システムの導入にあたってよくある3つの課題ごとに、それぞれオススメのシステムを紹介します。
※引用元:キンタイミライ公式HP
(https://kintaimirai.jp/)
※引用元:ジョブカン勤怠管理 公式HP
(https://jobcan.ne.jp/)
※引用元:マネーフォワード クラウド勤怠 公式HP
(https://biz.moneyforward.com/attendance/)
※選定基準:
・キンタイミライ:Google検索「勤怠管理システム」でヒットした55製品の内、本番開発前のプロトタイプ開発および導入後の無料調整を唯一行っているシステムとして選出(2023年5月16日調査時点)。
・ジョブカン勤怠管理:Google検索「勤怠管理システム」でヒットした55製品の内、必要な機能を選んで価格が決まる製品で、機能が200種類と最も多い (2023年5月16日調査時点)。
・マネーフォワード クラウド勤怠:Google検索「勤怠管理システム」でヒットした55製品の内、一元管理できるバックオフィス業務のシステムが最も多い(2023年5月16日調査時点)。
ここでは、勤怠管理システムを乗り換えるにあたってよくある3つの課題ごとに、それぞれどういう基準でシステムを選ぶべきかを解説いたします。
既存のシステムでは自社のルールに合った管理でができておらず、手作業が発生しているなど、今のシステムに課題を抱えている企業もたくさんいらっしゃることでしょう。ホテル、運輸・倉庫、小売り、飲食といった、一般的なオフィスワーカーとは異なる勤務体系の業種に多いようです。
また企業規模が大きくなればなるほど従業員の雇用形態や労働形態が複雑になる上、高いコンプライアンスを求められることから、大企業を中心に既存システムでは対応しきれなくなるケースも散見されます。
上記のような課題を抱えている企業に必要なのは、「高いカスタマイズ性」を持つ勤怠管理システム。既存システムの機能では解決できない以上、自社仕様に機能を開発/調整してもらうほかありません。
このようなシステムを導入するにあたっては、細かいヒアリングを行った後、エンジニアが機能を調整してくれるため、痒い所に手が届くシステムになるでしょう。その分、既存のシステムよりもコストがかかりますが、従業員規模1,000名~といった大企業であれば 費用感は合うはずです。
機能の充実した勤怠管理システムを入れてはみたものの、運用を始めてみるとあまり使っていない機能があることに気が付くケースです。複雑な機能を用いて厳密に管理を行うというよりかは、選び抜いた機能だけのシンプルで低コストなシステムに乗り換えたいとお考えの中小企業も多いでしょう。
従業員からも、管理者からも直感的に使えないとの声が上がったり、実際にエラーが頻出しているケースもあるようです。
上記のような課題を抱えている企業に必要なのは、「機能を選んでコスパ良く使える」勤怠管理システム。「出勤管理機能」「休日申請機能」だけで良い企業もあれば、「シフト管理機能」も欲しい企業もあるでしょう。
企業の規模や労務管理の方法などによって、欲しい機能は異なるのが普通。機能を厳選することで、従業員にとってもシンプルで使いやすく、経営者にとってもコスパの良いシステムとなるのです。
事業の拡大に伴って従業員は増えるものの、労務管理を行う人数は増えていかず、管理する現場では負担が増える一方。既存のシステムでは勤怠とその他バックオフィスシステムを別々に導入しているため、うまく連携できていないという課題を持つ企業もいらっしゃることでしょう。
ベンチャー企業などにおいては、上場を視野に入れてバックオフィス業務を一気に統制していきたいというケースもあるようです。
上記のような課題を抱えている企業に必要なのは、「バックオフィス業務を一元管理できる」勤怠管理システム。「勤怠管理」だけでなく「給与」「会計」「経費」「人事管理」など、複数のバックオフィスシステムを展開しているシステムから、自社が必要なシステムを組み合わせて乗り換えると良いでしょう。
当然連携することを前提に開発されている為「リアルタイムでの数値同期」などで税理士との連携を行いながら、より効率的にバックオフィス業務を遂行することが可能です。