打刻漏れの修正は、労務担当者にとって大きな業務負担となっています。毎月の給与計算前に、打刻漏れがある従業員を一人ひとり確認し、本人に連絡して事実確認を行い、修正申請を出してもらい、承認処理を行う。この一連の作業は、従業員数が多い企業では膨大な工数を要します。
特に月末の給与計算締め切り前は、複数の修正依頼が同時に発生し、担当者は通常業務を圧迫されながら対応に追われます。また、従業員によっては打刻漏れの理由を覚えていなかったり、修正申請の提出が遅れたりするケースもあり、何度も催促するストレスも無視できません。
こうした修正作業は本来、発生すべきではない「非生産的な業務」です。しかし多くの企業では、この状態が常態化しており、労務担当者の疲弊につながっています。
打刻漏れが多いと、労働時間の記録が不正確になり、様々な法的リスクが発生します。最も深刻なのは、残業時間の過少計上による未払い残業代の問題です。打刻漏れがあった時間帯に実際は働いていたにもかかわらず、記録がないために残業代が支払われないケースがあります。
労働基準法では、使用者に労働時間を適正に把握する義務が課されています。打刻漏れを従業員の自己責任として放置することは、この義務を果たしていないと判断される可能性があります。労働基準監督署の調査で指摘された場合、過去に遡って未払い賃金の支払いを求められるリスクがあります。
また、正確な労働時間が把握できないことで、36協定の上限管理や長時間労働者の産業医面談など、健康管理上の義務も適切に履行できなくなります。
従業員が打刻を忘れる理由は様々です。朝の慌ただしい時間帯に打刻機の前に行列ができていて後回しにした結果、そのまま忘れてしまう。直行直帰の営業職で、オフィスに立ち寄らないため打刻する機会がない。テレワーク中に打刻の習慣がなく、気づいたら業務を始めていた。こうした物理的なハードルが存在します。
また、打刻の重要性を十分に理解していない従業員もいます。特に、打刻漏れがあっても後から修正すればいいと考えていたり、打刻は労務管理のためだけのものと捉えていたりするケースです。打刻が自分の労働時間を正確に記録し、適正な賃金を受け取るために必要な行為であるという認識が不足していることが根本的な課題です。
さらに、心理的な要因として、打刻を忘れることへの危機感の欠如もあります。打刻漏れに対するペナルティがなかったり、周囲も頻繁に忘れている環境では、緊張感が生まれにくくなります。
打刻を単なる「記録行為」ではなく、「業務の一部」として明確に位置づけることが重要です。就業規則に、出退勤時の打刻は業務開始・終了の手続きとして必須であり、これを怠ることは就業規則違反にあたることを明記します。
この規定により、打刻は任意の行為ではなく、労働契約上の義務であることが明確になります。従業員に対しても、入社時のオリエンテーションや定期的な研修で、打刻の重要性と就業規則上の位置づけを説明することが効果的です。
また、打刻は労働時間の適正な把握のためだけでなく、従業員自身の権利を守るためのものであることを伝えることも重要です。正確な打刻がなければ、正当な残業代を受け取ることができないという視点を共有することで、従業員の意識を変えることができます。
打刻漏れが発生した場合の対応手順を明確化し、全従業員に周知することで、修正作業の負担を軽減できます。具体的には、打刻漏れに気づいた時点で、いつまでに、どのような方法で、誰に対して修正申請を行うべきかをルール化します。
例えば、「打刻漏れに気づいた日の翌営業日中に、所定のフォーマットで理由書を添えて上長に申請する」といった具体的な手順を定めます。理由書には、打刻漏れが発生した理由、実際の出退勤時刻、それを証明できる客観的な情報などを記載させます。
このフローを標準化することで、従業員は迷わずに対応でき、労務担当者も一貫した基準で承認・不承認を判断できます。また、理由書の提出を義務化することで、打刻の重要性を再認識させる効果もあります。
打刻漏れの頻度を人事評価に反映させることは、一定の抑止効果が期待できます。勤怠管理の適正性を評価項目の一つとして設定し、打刻漏れが多い従業員の評価を下げることで、打刻への意識を高めることができます。
ただし、この方法にはいくつかの注意点があります。まず、評価に反映させる基準を明確にし、公平性を保つ必要があります。例えば、月に何回以上の打刻漏れがあった場合に評価に影響するのか、やむを得ない事情がある場合はどう扱うのかなど、詳細なルールを定めるべきです。
また、打刻漏れを厳しく罰することが、かえってサービス残業を助長するリスクもあります。従業員が評価を下げられることを恐れて、実際には働いていない時間を打刻したり、残業時間を正直に申告しなくなったりする可能性があります。評価制度との連動は、適正な労働時間管理という本来の目的を見失わない範囲で慎重に導入すべきです。
営業職や現場作業員など、直行直帰が多い従業員にとって、オフィスの打刻機で打刻することは物理的に困難です。こうした課題を解決するのが、スマートフォンのGPS機能を活用した打刻システムです。
従業員は自分のスマートフォンから専用アプリを起動し、出勤・退勤ボタンをタップするだけで打刻が完了します。GPS情報も同時に記録されるため、どこで打刻したかが客観的に記録され、不正打刻の防止にもつながります。
テレワーク中の従業員も、自宅から打刻できるため、働き方に関わらず一貫した打刻ルールを適用できます。また、スマートフォンは常に携帯しているため、打刻機のある場所に移動する必要がなく、打刻を忘れにくい環境を作ることができます。
従業員が日常的に使用しているコミュニケーションツール、例えばSlackやLINE WORKSなどと勤怠管理システムを連携させることで、打刻のハードルを大幅に下げることができます。
チャットツール上で「出勤」「退勤」とメッセージを送るだけで打刻が完了したり、ボタンをタップするだけで記録されたりする仕組みにより、わざわざ勤怠管理システムにログインする手間が不要になります。普段の業務の動線上に打刻を組み込むことで、自然な流れで打刻できる環境を整えられます。
また、チーム内で打刻状況が可視化されることで、周囲の目が打刻忘れの抑止力になる効果も期待できます。同僚が打刻している様子を見て、自分も打刻しようという意識が働きやすくなります。
多くの勤怠管理システムには、打刻漏れを検知した際に自動的にアラートを発する機能が搭載されています。例えば、出勤打刻があったのに一定時間が経過しても退勤打刻がない場合、本人と管理者にメールやプッシュ通知でアラートが送られます。
このアラート機能により、打刻漏れが発生した当日中に気づくことができ、記憶が新鮮なうちに修正申請を行えます。翌月になってから大量の打刻漏れをまとめて修正する必要がなくなり、労務担当者の負担も大幅に軽減されます。
また、定期的にアラートを受け取ることで、従業員自身も打刻の重要性を再認識し、次第に忘れなくなる習慣化の効果も期待できます。システムが継続的にリマインドしてくれることで、人間の記憶力に頼らない管理体制を構築できます。
打刻漏れの修正を労務担当者が一手に引き受けるのではなく、従業員自身が修正申請を行い、直属の上長が承認するプロセスに変更することで、労務部門の負担を分散できます。
勤怠管理システム上で、従業員が自分の打刻データを確認し、漏れがあればその場で修正申請を送信できる機能を活用します。上長は自分のチームメンバーの申請を確認し、妥当性を判断して承認・差し戻しを行います。労務担当者は最終確認のみを行う体制にすることで、工数を大幅に削減できます。
このプロセスを機能させるには、従業員と管理職の双方に操作方法を周知し、申請期限を明確にすることが重要です。また、承認権限の委譲により、現場の実態をよく知る上長が判断できるため、より適切な労働時間管理が可能になります。
勤怠管理システムのデータ分析機能を活用し、打刻漏れが多い部署や個人を特定することで、効果的な改善指導が可能になります。全社一律の注意喚起ではなく、問題がある箇所にピンポイントで対策を講じることで、効率的に打刻漏れを減らせます。
例えば、特定の部署で打刻漏れが集中している場合、その部署の業務フローや職場環境に問題がないかを確認します。打刻機が遠い、朝の業務開始が慌ただしいなど、物理的な要因があれば環境改善を行います。
個人レベルで打刻漏れが多い場合は、個別に面談を行い、原因を聞き取ります。打刻の重要性を理解していない、システムの使い方が分からないなど、理由に応じた対応を行うことで、根本的な解決につながります。
PCのログイン・ログアウト時刻、入退室管理システムのデータなど、客観的な記録と打刻データを自動照合する仕組みを導入することで、打刻の正確性を高められます。
例えば、PCログインが9時なのに打刻が9時30分になっている場合、システムが自動的に差異を検出し、本人に確認を促します。この仕組みにより、打刻忘れだけでなく、不正確な打刻も防止できます。
また、客観的記録がある場合、従業員が打刻を忘れても、PCログなどから実際の労働時間を推定して自動的に補正する機能を持つシステムもあります。これにより、修正申請の手間を減らしながら、正確な労働時間を記録できます。
打刻方法は、従業員の働き方や職場環境に合わせて選ぶことが重要です。オフィスワーク中心の企業であれば、ICカードやタブレット端末による打刻が適しています。製造現場や店舗では、共用の打刻端末やタイムレコーダーが使いやすいでしょう。
営業職や在宅勤務者が多い場合は、スマートフォンアプリによる打刻が必須です。また、複数の勤務形態が混在する企業では、従業員ごとに異なる打刻方法を選択できる柔軟性のあるシステムが望ましいです。
打刻デバイスの選定では、従業員の年齢層やITリテラシーも考慮する必要があります。高齢の従業員が多い場合、スマートフォン操作に不慣れな人もいるため、シンプルな操作で打刻できる仕組みが求められます。
自社に最適な勤怠管理システムを選ぶ際の参考として、打刻漏れ防止機能に優れたシステムを比較検討することをお勧めします。この記事のページ下部には、打刻方法の多様性、アラート機能の充実度、使いやすさの観点から厳選した勤怠管理システム3選を掲載しています。
各システムの特徴、料金体系、導入事例などを詳しく紹介していますので、ぜひご覧ください。無料トライアルが可能なシステムもありますので、実際に使用感を確かめた上で導入を検討することができます。
システム選定に迷った際は、複数のシステムを比較し、自社の課題を最も効果的に解決できるものを選ぶことが成功の鍵です。
【抱えている課題別比較】
自社にあった
おすすめの勤怠管理
システムの選び方
打刻漏れは、労務担当者の業務負担を増やすだけでなく、不正確な労働時間管理による法的リスクや未払い残業代の問題を引き起こします。従業員が打刻を忘れる背景には、物理的なハードル、打刻の重要性への認識不足、習慣化の欠如など、様々な要因が存在します。
これらの課題に対しては、就業規則での明確な位置づけ、打刻漏れ発生時の標準化されたフロー、評価制度との適切な連動など、社内ルールの整備が重要です。しかし、従業員の意識改革だけでは限界があります。
根本的な解決には、スマートフォンGPS打刻、チャットツール連携、自動アラート機能など、「仕組み」によって打刻漏れを防ぐ環境を整えることが不可欠です。また、従業員主体の修正申請プロセス、データ分析による個別指導、客観的記録との自動照合など、修正・承認フローの効率化も並行して進めるべきです。
自社の働き方に合った打刻デバイスと勤怠管理システムを選定し、打刻漏れのない労働時間管理体制を構築しましょう。
ここでは、勤怠管理システムの導入にあたってよくある3つの課題ごとに、それぞれオススメのシステムを紹介します。
※引用元:キンタイミライ公式HP
(https://kintaimirai.jp/)
タップすると各機能の説明が表示されます
「時間帯ごとの要員数」と「人件費予算」を同時に確認しながら、シフトの登録・調整を実施
1ヵ月60時間を超える時間外労働について、代替休暇を取得
指定した起算日に基づき、4週4休のチェックを実施し、必要に応じて休日出勤を割り当て
社会保険・36協定・長時間労働に関して、指定したルールに基づきアラート
振替出勤が発生してから指定期間が経過すると、休日出勤の割増賃金対象の時間数として自動精算
その企業固有の集計方法をきめ細かに設定し、集計を自動化
集計結果を含んだ出勤簿をPDF形式で出力
日々の勤務実績に基づく人件費を計算し、締め日を待たずして人件費を把握可能
従業員のマスタ情報を1ヶ月単位で管理できるほか、CSV形式で一括して取得/編集/登録も可能
社員やバイト、パートといった従業員の属性別にカレンダーを設定できるほか、まるめ・集計機能との連動も可能
登録されたシフトに基づいて、遅刻早退を自動で判定
売上や生産高、処理量などの成果を入力し、その成果と勤務実績を対比させて、折れ線グラフで表示
※引用元:ジョブカン勤怠管理 公式HP
(https://jobcan.ne.jp/)
タップすると各機能の説明が表示されます
リアルタイムでスタッフの勤務状況の確認や拠点ごとの勤怠管理が可能
直感的な画面操作で簡単にシフトを申請・作成が可能
出勤管理機能やシフト管理機能と連動し、複雑な休暇管理を簡単に実施
スマホやタブレットでも、打刻・閲覧・各種申請などが可能
スタッフやタスクごとの工数集計やデータ出力・分析が可能
スタッフの勤務状況を自動集することが可能
時間外労働状を一覧で確認でき、36協定超過がある際は自動アラートでお知らせ
画面上の言語は、英語、韓国語、スペイン語、タイ語、中国語(簡体字・繁体字)、ベトナム語への切り替えが可能
医療現場の勤務形態に合わせた運用が可能
※引用元:マネーフォワード クラウド勤怠 公式HP
(https://biz.moneyforward.com/attendance/)
タップすると各機能の説明が表示されます
日次勤怠、勤怠確認、分析レポート、拠点別打刻集計、カスタム自動集計(数値集計)
役職階層、ワークフロー経路、申請ワークフロー、代理申請ワークフロー、受信ワークフロー
異動予約(役職)一覧、異動予約(就業ルール)一覧
有給休暇の自動付与、有給休暇付与予定一覧、有給休暇管理簿
不正な打刻・打刻漏れ、許可されていない打刻、無効な勤務パターン
打刻ごとの丸め設定、出勤・退勤・休憩の丸め設定、勤怠項目ごとの丸め設定、日ごと・月ごとの丸め設定、未申請の丸め設定、シフト範囲外打刻の丸め設定
従業員データ、日次勤怠データ、有給休暇利用実績、休暇付与データなどのインポート
従業員データ、月別データ、出勤簿データ、出勤簿データ、1ヶ月のシフト表、時間帯別のシフト表などのエクスポート
シフト管理、操作権限設定、ワークフロー通知、マネーフォワード クラウド給与との連携
※選定基準:
・キンタイミライ:Google検索「勤怠管理システム」でヒットした55製品の内、本番開発前のプロトタイプ開発および導入後の無料調整を唯一行っているシステムとして選出(2023年5月16日調査時点)。
・ジョブカン勤怠管理:Google検索「勤怠管理システム」でヒットした55製品の内、必要な機能を選んで価格が決まる製品で、機能が200種類と最も多い (2023年5月16日調査時点)。
・マネーフォワード クラウド勤怠:Google検索「勤怠管理システム」でヒットした55製品の内、一元管理できるバックオフィス業務のシステムが最も多い(2023年5月16日調査時点)。
ここでは、勤怠管理システムを乗り換えるにあたってよくある3つの課題ごとに、それぞれどういう基準でシステムを選ぶべきかを解説いたします。
既存のシステムでは自社のルールに合った管理でができておらず、手作業が発生しているなど、今のシステムに課題を抱えている企業もたくさんいらっしゃることでしょう。ホテル、運輸・倉庫、小売り、飲食といった、一般的なオフィスワーカーとは異なる勤務体系の業種に多いようです。
また企業規模が大きくなればなるほど従業員の雇用形態や労働形態が複雑になる上、高いコンプライアンスを求められることから、大企業を中心に既存システムでは対応しきれなくなるケースも散見されます。
上記のような課題を抱えている企業に必要なのは、「高いカスタマイズ性」を持つ勤怠管理システム。既存システムの機能では解決できない以上、自社仕様に機能を開発/調整してもらうほかありません。
このようなシステムを導入するにあたっては、細かいヒアリングを行った後、エンジニアが機能を調整してくれるため、痒い所に手が届くシステムになるでしょう。その分、既存のシステムよりもコストがかかりますが、従業員規模1,000名~といった大企業であれば 費用感は合うはずです。
機能の充実した勤怠管理システムを入れてはみたものの、運用を始めてみるとあまり使っていない機能があることに気が付くケースです。複雑な機能を用いて厳密に管理を行うというよりかは、選び抜いた機能だけのシンプルで低コストなシステムに乗り換えたいとお考えの中小企業も多いでしょう。
従業員からも、管理者からも直感的に使えないとの声が上がったり、実際にエラーが頻出しているケースもあるようです。
上記のような課題を抱えている企業に必要なのは、「機能を選んでコスパ良く使える」勤怠管理システム。「出勤管理機能」「休日申請機能」だけで良い企業もあれば、「シフト管理機能」も欲しい企業もあるでしょう。
企業の規模や労務管理の方法などによって、欲しい機能は異なるのが普通。機能を厳選することで、従業員にとってもシンプルで使いやすく、経営者にとってもコスパの良いシステムとなるのです。
事業の拡大に伴って従業員は増えるものの、労務管理を行う人数は増えていかず、管理する現場では負担が増える一方。既存のシステムでは勤怠とその他バックオフィスシステムを別々に導入しているため、うまく連携できていないという課題を持つ企業もいらっしゃることでしょう。
ベンチャー企業などにおいては、上場を視野に入れてバックオフィス業務を一気に統制していきたいというケースもあるようです。
上記のような課題を抱えている企業に必要なのは、「バックオフィス業務を一元管理できる」勤怠管理システム。「勤怠管理」だけでなく「給与」「会計」「経費」「人事管理」など、複数のバックオフィスシステムを展開しているシステムから、自社が必要なシステムを組み合わせて乗り換えると良いでしょう。
当然連携することを前提に開発されている為「リアルタイムでの数値同期」などで税理士との連携を行いながら、より効率的にバックオフィス業務を遂行することが可能です。