IT導入補助金は、中小企業や小規模事業者が自社の課題を解決するためのITツール(ソフトウェアやクラウドサービスなど)を導入する経費の一部を補助する制度です。経済産業省の管轄のもと、企業の生産性向上を支援することを目的としています。
勤怠管理システムの導入において、最もポピュラーで利用件数が多いのがこの補助金です。要件を満たせばクラウド利用料の最大2年分が補助対象になるなど、コスト削減効果が非常に大きい制度と言えます。
申請するITツールの種類や目的に応じて複数の枠が設けられています。勤怠管理システム単体の場合は主に「通常枠」が該当しますが、インボイス対応の会計・受発注ソフト等と組み合わせて導入する場合は、より補助率の高い枠を活用できるケースもあります。
枠や導入するツールの機能数によって異なりますが、通常枠の場合は導入費用の1/2以内(最大150万円など)が補助されます。初期費用だけでなく、クラウドシステムの月額・年額利用料も一定期間分が対象となるのが魅力です。
業務改善助成金は、事業場内最低賃金を一定額以上引き上げ、それに伴う生産性向上に資する設備投資(ITツールの導入など)を行った場合に、その費用の一部を助成する厚生労働省の制度です。
この助成金は「賃上げ」という従業員の待遇改善を主目的としており、そのための手段として勤怠管理システムを導入して業務のムダを省く、というストーリーが求められます。
事業場内最低賃金を一定額(例:30円、50円、90円コースなど)以上引き上げることが必須の要件となります。引き上げる金額のコースや、引き上げの対象となる労働者の人数によって、後述する助成上限額が変動する仕組みです。
助成率は企業の規模や引き上げ前の最低賃金額によって異なり、導入費用の3/4から最大9/10など、非常に高い割合で助成されます。上限額は、引き上げ額と引き上げ人数に応じて数十万円から数百万円まで細かく設定されています。
働き方改革推進支援助成金は、労働時間の設定改善や年次有給休暇の取得促進など、従業員が働きやすい環境づくりに取り組む中小企業を支援する厚生労働省の制度です。
複数のコースが存在しますが、労働時間の適正把握や残業削減のための設備投資として、勤怠管理システムの導入費用が広く対象となっています。
「月60時間を超える時間外労働をなくす」「年次有給休暇の計画的付与制度を新たに導入する」といった、労働環境を改善するための具体的な目標(成果目標)を設定し、それを達成することが受給の主な要件となります。
助成率は原則として費用の3/4(特定の要件を満たすと4/5等に割増)です。上限額は、設定した成果目標の内容や対象となる労働者の数に応じて変動しますが、こちらも数十万円から数百万円規模での受給が可能です。
勤怠管理システムを導入する主な目的が、「紙のタイムカードやExcelでの手入力をなくしたい」「給与計算などのバックオフィス業務の負担を軽減して効率化を図りたい」といった純粋なIT化である場合は、経済産業省が管轄する「IT導入補助金」の活用が最も適しています。この補助金は、企業の生産性向上を支援することに特化しているため、就業規則の変更や賃金引き上げといった労務面での厳しい要件が設けられていないのが特徴です。
特に、初めてクラウドサービスを導入する企業や、専任のIT担当者が不在の中小企業にとっては、国から認定を受けたIT導入支援事業者の手厚いサポートを受けられる点が大きな魅力です。システム選びから申請手続き、導入後のフォローまでをプロと二人三脚で進められるため、手間をかけずにスムーズなデジタル化を実現したい場合に強くおすすめできます。
システムの導入と併せて、「従業員のモチベーションアップのために給与ベースを上げたい」「最低賃金の改定に合わせて社内の賃金テーブルを見直す予定がある」という企業には、厚生労働省の「業務改善助成金」が最適です。この助成金は、事業場内最低賃金を一定額以上引き上げることを必須の要件としており、そのための生産性向上に資する設備投資として勤怠管理システムが対象となります。
助成率が非常に高く、条件を満たせば導入費用の最大10分の9が助成されるため、自己負担を最小限に抑えてシステム化と従業員の待遇改善を同時に実現できるのが最大のメリットです。ただし、一度引き上げた賃金は原則として後から下げることはできないため、一時的なシステム導入コストの削減だけを目的とするのではなく、中長期的な人件費の増加を見据えた上で慎重に検討する必要があります。
「長時間労働を是正して従業員のワークライフバランスを向上させたい」「有給休暇を取得しやすい環境を整備したい」といった、働き方改革に直結する課題を抱えている企業には、「働き方改革推進支援助成金」が向いています。月間の時間外労働時間の削減や、年次有給休暇の計画的付与制度の導入など、労働環境の改善に向けた具体的な目標(成果目標)を設定し、その達成に向けた労務管理の手法として勤怠管理システムを活用する形になります。
労働基準法などの法改正にしっかり対応し、未払い残業代のリスク軽減や企業のコンプライアンス強化を図りたい場合に非常に有効な選択肢となります。申請にあたっては、就業規則の改定や36協定の締結・見直しなど、労務管理体制の根本的な整備が求められるケースも多いため、社会保険労務士などの専門家と連携しながら進めることで、より働きやすい強固な組織づくりにつなげることができるでしょう。
補助金や助成金を活用する第一歩は、現在抱えている労務管理の課題と、システム導入によって何を解決したいのかを明確にすることです。例えば、「月末のタイムカード集計に膨大な時間がかかっている」「法改正に伴う有給休暇の管理が追いついていない」といった具体的な課題を洗い出します。
これらの課題を明確にすることは、単なるシステム選びだけでなく、後々必要となる補助金・助成金の申請理由や事業計画を作成する際の重要な土台となります。目的が曖昧なままでは審査に通りにくくなるため、経営陣と現場の担当者でしっかりとすり合わせを行っておきましょう。
目的が明確になったら、自社がどの補助金・助成金の対象となるかをリサーチし、詳細な公募要領を確認します。「IT導入補助金」「業務改善助成金」「働き方改革推進支援助成金」など、それぞれの制度には企業の規模(資本金や従業員数)や取り組むべき要件が細かく定められています。
特に注意すべきは、申請受付のスケジュールと「賃金引き上げ」や「就業規則の変更」といった付帯する条件を自社がクリアできるかどうかです。最新の要件は年度や公募回によって変更されることが多いため、必ず経済産業省や厚生労働省などの公式サイト、または各制度の特設ポータルサイトで最新情報をチェックしてください。
利用する制度の目星がついたら、次はその制度の対象となっている勤怠管理システムと、販売元であるベンダー(IT導入支援事業者など)を選定します。補助金や助成金を利用する場合、世の中にあるすべてのシステムが対象になるわけではなく、あらかじめ事務局に登録・認定されたツールの中から選ぶのが一般的です。
ベンダー選びでは、システムの機能性や使いやすさはもちろん、補助金申請のサポート実績が豊富かどうかも重要な判断基準となります。親身に相談に乗ってくれるベンダーをパートナーに選ぶことで、複雑な申請手続きの負担を大幅に軽減でき、採択率を高めることにもつながります。
導入するシステムとベンダーが決まったら、いよいよ申請手続きに入ります。登記事項証明書や納税証明書、決算書、さらには賃金台帳や労働者名簿など、制度に応じて様々な公的書類や社内書類を準備する必要があります。近年は「gBizIDプライム」などを利用した電子申請が主流となっているため、事前のアカウント取得も欠かせません。
書類が揃ったら事務局へ申請を行い、審査結果を待ちます。無事に審査を通過して「交付決定(または支給決定)」の通知を受け取るまでは、絶対にシステムの契約や支払いを行ってはいけません。事前着手してしまうと、原則として補助や助成の対象外となってしまうため十分に注意しましょう。
交付決定の通知を受け取った後、正式にベンダーと契約を結び、勤怠管理システムの導入と初期費用の支払いを行います。システムが稼働し、従業員への周知や初期設定が完了したら、事務局に対して「実績報告」という手続きを行わなければなりません。
実績報告では、契約書や請求書、支払い完了を示す銀行の振込明細書などを提出し、「計画通りにシステムを導入し、費用を支払ったこと」を証明します。この実績報告の審査が無事に承認されて初めて、指定した銀行口座に補助金や助成金が振り込まれる(後払いとなる)仕組みです。導入後も、制度によっては数年間の状況報告が義務付けられる場合があります。
補助金や助成金の申請において、最も多く見られる致命的な失敗が「事前着手」です。これは、事務局から「交付決定(または支給決定)」の通知を受け取る前に、勤怠管理システムの契約を結んだり初期費用を支払ってしまったりすることを指します。自社の課題に合った良いシステムを見つけるとすぐに導入したくなりますが、公的な支援制度を利用する場合は厳格なルールの遵守が求められます。
もし交付決定より前に契約書にサインをしたり、ベンダーへ代金を振り込んだりした場合、その経費は原則としてすべて補助・助成の対象外となってしまいます。「後から申請すれば間に合うだろう」という認識は一切通用しないため、必ず事務局からの正式な決定通知を受け取った後に、契約および支払い手続きを進めるよう社内で徹底してください。
補助金や助成金は、思い立ったときにいつでもすぐに申請して受給できるわけではありません。IT導入補助金のように年間を通じて複数回の公募スケジュールが設けられているものもあれば、国の予算上限に達した時点で予告なく早期終了してしまう制度もあります。また、申請に必要な公的書類(登記簿謄本や納税証明書など)の取得や、社内の就業規則の改定手続きには想像以上の時間がかかるケースが一般的です。
申請書類の準備から実際の交付決定、そしてシステムを導入して補助金が口座に振り込まれるまでには、短くても数ヶ月、長ければ半年以上の期間を要することをあらかじめ想定しておきましょう。直近の法改正対応などで「来月からすぐにシステムを稼働させたい」といったタイトなスケジュールの場合は、制度の利用が間に合わないこともあるため、早め早めの情報収集と準備が成功の鍵となります。
制度を利用する上で資金繰りの観点から特に注意が必要なのが、補助金や助成金は「原則として後払い」であるという事実です。システム導入にかかる初期費用やクラウドの利用料金などは、まず自社で全額をベンダーに対して立て替え払いする必要があります。国から導入前や導入と同時に資金が支給されるわけではないため、手元の資金計画には十分に気を配らなければなりません。
すべての支払いを終え、システムが稼働した後に事務局へ「実績報告」を行い、その審査に通過して初めて指定の口座に決定額が振り込まれる仕組みとなっています。したがって、一時的とはいえ経費の全額を自社で支払うためのキャッシュフローが確保できているか、申請前にあらかじめ財務担当者や経営陣と確認しておくことが非常に重要です。
今回は、勤怠管理システムの導入費用を大幅に抑えることができる「補助金」と「助成金」について、具体的な制度の種類や選び方、申請手順や注意点を解説しました。自社の目的が「純粋な業務効率化」なのか、「従業員の賃金引き上げ」なのか、あるいは「労働環境の抜本的な改善」なのかによって、選ぶべき制度は「IT導入補助金」「業務改善助成金」「働き方改革推進支援助成金」と明確に分かれます。
どの制度を利用する場合でも、「交付決定前の事前着手(契約・支払い)は厳禁」であり、「原則として後払い(実費精算)」となる点には十分な注意が必要です。複雑な要件確認や書類作成を自社だけで抱え込まず、実績豊富なIT導入支援事業者(システムベンダー)や社会保険労務士などの専門家を頼ることで、手続きの手間を省きつつ申請の成功率を高めることができます。まずは自社の労務課題を整理し、最適な制度の活用に向けて情報収集から始めてみましょう。
ここでは、勤怠管理システムの導入にあたってよくある3つの課題ごとに、それぞれオススメのシステムを紹介します。
※引用元:キンタイミライ公式HP
(https://kintaimirai.jp/)
タップすると各機能の説明が表示されます
「時間帯ごとの要員数」と「人件費予算」を同時に確認しながら、シフトの登録・調整を実施
1ヵ月60時間を超える時間外労働について、代替休暇を取得
指定した起算日に基づき、4週4休のチェックを実施し、必要に応じて休日出勤を割り当て
社会保険・36協定・長時間労働に関して、指定したルールに基づきアラート
振替出勤が発生してから指定期間が経過すると、休日出勤の割増賃金対象の時間数として自動精算
その企業固有の集計方法をきめ細かに設定し、集計を自動化
集計結果を含んだ出勤簿をPDF形式で出力
日々の勤務実績に基づく人件費を計算し、締め日を待たずして人件費を把握可能
従業員のマスタ情報を1ヶ月単位で管理できるほか、CSV形式で一括して取得/編集/登録も可能
社員やバイト、パートといった従業員の属性別にカレンダーを設定できるほか、まるめ・集計機能との連動も可能
登録されたシフトに基づいて、遅刻早退を自動で判定
売上や生産高、処理量などの成果を入力し、その成果と勤務実績を対比させて、折れ線グラフで表示
※引用元:ジョブカン勤怠管理 公式HP
(https://jobcan.ne.jp/)
タップすると各機能の説明が表示されます
リアルタイムでスタッフの勤務状況の確認や拠点ごとの勤怠管理が可能
直感的な画面操作で簡単にシフトを申請・作成が可能
出勤管理機能やシフト管理機能と連動し、複雑な休暇管理を簡単に実施
スマホやタブレットでも、打刻・閲覧・各種申請などが可能
スタッフやタスクごとの工数集計やデータ出力・分析が可能
スタッフの勤務状況を自動集することが可能
時間外労働状を一覧で確認でき、36協定超過がある際は自動アラートでお知らせ
画面上の言語は、英語、韓国語、スペイン語、タイ語、中国語(簡体字・繁体字)、ベトナム語への切り替えが可能
医療現場の勤務形態に合わせた運用が可能
※引用元:マネーフォワード クラウド勤怠 公式HP
(https://biz.moneyforward.com/attendance/)
タップすると各機能の説明が表示されます
日次勤怠、勤怠確認、分析レポート、拠点別打刻集計、カスタム自動集計(数値集計)
役職階層、ワークフロー経路、申請ワークフロー、代理申請ワークフロー、受信ワークフロー
異動予約(役職)一覧、異動予約(就業ルール)一覧
有給休暇の自動付与、有給休暇付与予定一覧、有給休暇管理簿
不正な打刻・打刻漏れ、許可されていない打刻、無効な勤務パターン
打刻ごとの丸め設定、出勤・退勤・休憩の丸め設定、勤怠項目ごとの丸め設定、日ごと・月ごとの丸め設定、未申請の丸め設定、シフト範囲外打刻の丸め設定
従業員データ、日次勤怠データ、有給休暇利用実績、休暇付与データなどのインポート
従業員データ、月別データ、出勤簿データ、出勤簿データ、1ヶ月のシフト表、時間帯別のシフト表などのエクスポート
シフト管理、操作権限設定、ワークフロー通知、マネーフォワード クラウド給与との連携
※選定基準:
・キンタイミライ:Google検索「勤怠管理システム」でヒットした55製品の内、本番開発前のプロトタイプ開発および導入後の無料調整を唯一行っているシステムとして選出(2023年5月16日調査時点)。
・ジョブカン勤怠管理:Google検索「勤怠管理システム」でヒットした55製品の内、必要な機能を選んで価格が決まる製品で、機能が200種類と最も多い (2023年5月16日調査時点)。
・マネーフォワード クラウド勤怠:Google検索「勤怠管理システム」でヒットした55製品の内、一元管理できるバックオフィス業務のシステムが最も多い(2023年5月16日調査時点)。
ここでは、勤怠管理システムを乗り換えるにあたってよくある3つの課題ごとに、それぞれどういう基準でシステムを選ぶべきかを解説いたします。
既存のシステムでは自社のルールに合った管理でができておらず、手作業が発生しているなど、今のシステムに課題を抱えている企業もたくさんいらっしゃることでしょう。ホテル、運輸・倉庫、小売り、飲食といった、一般的なオフィスワーカーとは異なる勤務体系の業種に多いようです。
また企業規模が大きくなればなるほど従業員の雇用形態や労働形態が複雑になる上、高いコンプライアンスを求められることから、大企業を中心に既存システムでは対応しきれなくなるケースも散見されます。
上記のような課題を抱えている企業に必要なのは、「高いカスタマイズ性」を持つ勤怠管理システム。既存システムの機能では解決できない以上、自社仕様に機能を開発/調整してもらうほかありません。
このようなシステムを導入するにあたっては、細かいヒアリングを行った後、エンジニアが機能を調整してくれるため、痒い所に手が届くシステムになるでしょう。その分、既存のシステムよりもコストがかかりますが、従業員規模1,000名~といった大企業であれば 費用感は合うはずです。
機能の充実した勤怠管理システムを入れてはみたものの、運用を始めてみるとあまり使っていない機能があることに気が付くケースです。複雑な機能を用いて厳密に管理を行うというよりかは、選び抜いた機能だけのシンプルで低コストなシステムに乗り換えたいとお考えの中小企業も多いでしょう。
従業員からも、管理者からも直感的に使えないとの声が上がったり、実際にエラーが頻出しているケースもあるようです。
上記のような課題を抱えている企業に必要なのは、「機能を選んでコスパ良く使える」勤怠管理システム。「出勤管理機能」「休日申請機能」だけで良い企業もあれば、「シフト管理機能」も欲しい企業もあるでしょう。
企業の規模や労務管理の方法などによって、欲しい機能は異なるのが普通。機能を厳選することで、従業員にとってもシンプルで使いやすく、経営者にとってもコスパの良いシステムとなるのです。
事業の拡大に伴って従業員は増えるものの、労務管理を行う人数は増えていかず、管理する現場では負担が増える一方。既存のシステムでは勤怠とその他バックオフィスシステムを別々に導入しているため、うまく連携できていないという課題を持つ企業もいらっしゃることでしょう。
ベンチャー企業などにおいては、上場を視野に入れてバックオフィス業務を一気に統制していきたいというケースもあるようです。
上記のような課題を抱えている企業に必要なのは、「バックオフィス業務を一元管理できる」勤怠管理システム。「勤怠管理」だけでなく「給与」「会計」「経費」「人事管理」など、複数のバックオフィスシステムを展開しているシステムから、自社が必要なシステムを組み合わせて乗り換えると良いでしょう。
当然連携することを前提に開発されている為「リアルタイムでの数値同期」などで税理士との連携を行いながら、より効率的にバックオフィス業務を遂行することが可能です。