変形労働時間制とは、業務の繁閑や特殊性に応じて、一定期間の平均で法定労働時間を満たせばよい制度です。言い換えれば、1日単位や1週間単位では法定労働時間を超える日があってもよいということです。例えば、繁忙期には1日10時間働き、閑散期には1日6時間にするといった調整が可能になります。重要な点は、「変形」とは時間配分を工夫することであり、総労働時間の削減ではないということです。あくまで一定期間における総労働時間が法定労働時間の総枠内に収まることが条件となります。
変形労働時間制を導入する最大のメリットは、繁忙期の残業代を大幅に削減できるという点です。通常、1日8時間を超える労働には割増賃金が発生しますが、変形労働時間制では繁忙期の所定労働時間を10時間に設定しておけば、その日は10時間までの労働に対して残業代が発生しません。
これにより、繁忙期と閑散期の差が大きい業種では、人件費の最適化が実現します。さらに、閑散期に労働時間を短縮することで、従業員のプライベート時間が増え、ワークライフバランスの向上にも繋がります。企業側と従業員側の双方にメリットがある制度として評価されています。
1か月単位の変形労働時間制は、1か月以内の期間を平均して、1週間当たりの労働時間が40時間以内に収まるように調整する制度です。対象事業所の制限がなく、全業種・全規模の企業で導入できます。月初と月末で繁閑が異なるような業務に最も適しており、例えば「月初は営業活動で10時間/日、月末は事務作業で6時間/日」といった柔軟な設定が可能です。
手続き面では、就業規則への記載または労使協定の締結のいずれか一方で足りるため、比較的導入がしやすい制度です。また、1日や1週間の労働時間に明確な上限がないため、業務の特性に合わせた柔軟な運用ができます。月の歴日数が28日から31日と異なるため、毎月の法定労働時間上限を計算し直す必要がある点には注意が必要です。
1年単位の変形労働時間制は、1か月を超え1年以内の一定期間を平均して、週40時間以内に調整する制度です。こちらも全業種・全規模が対象です。季節ごとに大きく繁閑が変わる業務に適しており、流通業のセール時期、製造業の季節変動、観光業の観光シーズンなど、年間を通じた繁閑の波に対応できます。
ただし、1年単位には複数の制約があります。1日の労働時間は10時間以内、1週間の労働時間は52時間以内、連続労働日数は最長6日という上限が設定されています。また、手続き面では就業規則への記載と労使協定の締結の両方が必須であり、1か月単位よりも導入難度が高くなります。運用の厳密性が求められる制度ですが、季節変動が大きい企業にとっては最適な選択肢となります。
1週間単位の非定型的変形労働時間制は、30人未満の小売業、旅館、料理店、飲食店に限定される制度です。繁閑が直前でないと予測できない業種を想定しており、1週間単位で毎日の労働時間を1日10時間以内で自由に設定できます。労使協定の締結と労働基準監督署への届出が必要です。
一方、フレックスタイム制は変形労働時間制の一種であり、従業員が出退勤時刻を自由に選択できる制度です。清算期間における総労働時間が所定労働時間となり、1週間平均で40時間以内に収まるよう設計されます。コアタイム(必ず勤務すべき時間帯)を設けることが一般的ですが、全く設けないことも可能です。営業職や企画職など、業務の融通が効きやすい職種で導入されることが多い制度です。
1か月単位の変形労働時間制を導入する際、最も重要なのがその月の法定労働時間上限を正確に計算することです。月の暦日数は28日から31日と異なるため、毎月の上限が変わります。計算式は以下の通りです。
法定労働時間上限 = 40時間 × (対象期間の暦日数 ÷ 7日)
例えば、30日の月の場合、40時間 × (30日 ÷ 7日) = 171.4時間となります。つまり、その月の総労働時間は171.4時間以内に収める必要があります。
1年単位の変形労働時間制の場合、対象期間全体での法定労働時間を計算します。対象期間が1年(365日)であれば、計算式は以下の通りです。
年間法定労働時間上限 = 40時間 × (365日 ÷ 7日) = 2,085.7時間
ただし、1年単位の制度では対象期間が1か月以上1年以内であれば良いため、対象期間を柔軟に設定できます。例えば、4月から翌年3月までの1年間を対象期間とする企業も多くあります。この場合も同じ計算式で上限時間を算出します。
変形労働時間制で最も重要な原則は、決定した労働時間配分は対象期間中は変更できないということです。シフト作成時に「10時間/日」と決めたら、その日は10時間で固定されます。事後的に「やっぱり9時間にしよう」といった変更はできません。また、従業員に対しても、対象期間開始前に、具体的な労働日・労働時間を書面で明示・周知する義務があります。これを怠ると労働基準法違反となり、行政指導の対象になる可能性があります。
変形労働時間制を導入しても、割増賃金(残業代)は発生します。ただし、その計算方法が通常の固定勤務制とは異なります。変形労働時間制における割増発生は、3つのレベルで判定されます。
所定労働時間が1日8時間を超える日に設定されている場合、その所定時間を超えた部分が割増対象となります。それ以外の日(所定時間が8時間以下の日)では、実際の労働時間が8時間を超えた場合に、その超過分が割増対象となります。
所定労働時間が1週40時間を超える週に設定されている場合、その所定時間を超えた部分が割増対象となります。それ以外の週では、実際の労働時間が40時間を超えた場合に、その超過分が割増対象となります。ただし、1日単位で既にカウントされた残業時間は除外されます。
対象期間における実労働時間が、法定労働時間の総枠を超えた場合、その超過分が割増対象となります。計算式は以下の通りです。
割増対象時間 = 実労働時間 − 法定労働時間総枠 − (レベル1・2の割増時間)
1か月単位の変形労働時間制の具体例を示します。30日の月で、暦日数30日の法定労働時間上限は171.4時間です。以下のようなシフトを組んだとしましょう。
・第1週(月~金):10時間 × 4日 = 40時間
・第2週(月~金):10時間 × 3日 + 8時間 × 2日 = 46時間
・第3週(月~金):8時間 × 5日 = 40時間
・第4週(月~金):6時間 × 5日 = 30時間
・合計:156時間
この場合、実労働時間156時間は法定労働時間上限171.4時間以内に収まっています。第2週は50時間ですが、この週の所定労働時間は46時間であり、50時間働いた場合、4時間が1週単位での割増対象となります。ただし、この4時間のうち、1日単位で既にカウントされた時間があれば、そこから控除されます。このように、3つのレベルを順次確認しながら、重複を避けて割増時間を計算する必要があります。
割増賃金の支払いについては、割増率が重要です。変形労働時間制における割増賃金も、通常の時間外労働と同じく2割5分以上の割増率を適用します。ただし、月60時間を超える時間外労働については、5割以上の割増率が適用される場合があります。これは大企業(資本金3,000万円超)の場合に適用される場合が多いため、自社の該当有無を確認しておくことが重要です。
変形労働時間制は、業務の繁閑に応じた労働時間配分を実現する有効な制度です。導入することで残業代の削減と従業員のワークライフバランス向上の両立が期待できます。しかし、その効果を最大限に引き出すためには、制度選択から手続き、運用まで、各段階で正確な理解と実行が不可欠です。
特に重要なのは、事前の準備と従業員への周知です。勤怠データの分析から始まり、就業規則の改定、労使協定の締結、行政への届出、そして従業員への説明会開催まで、適切なプロセスを踏むことが法令遵守につながります。また、導入後は勤怠管理システムの活用により、計算ミスやシフト作成の負担を軽減することをお勧めします。
ここでは、勤怠管理システムの導入にあたってよくある3つの課題ごとに、それぞれオススメのシステムを紹介します。
※引用元:キンタイミライ公式HP
(https://kintaimirai.jp/)
タップすると各機能の説明が表示されます
「時間帯ごとの要員数」と「人件費予算」を同時に確認しながら、シフトの登録・調整を実施
1ヵ月60時間を超える時間外労働について、代替休暇を取得
指定した起算日に基づき、4週4休のチェックを実施し、必要に応じて休日出勤を割り当て
社会保険・36協定・長時間労働に関して、指定したルールに基づきアラート
振替出勤が発生してから指定期間が経過すると、休日出勤の割増賃金対象の時間数として自動精算
その企業固有の集計方法をきめ細かに設定し、集計を自動化
集計結果を含んだ出勤簿をPDF形式で出力
日々の勤務実績に基づく人件費を計算し、締め日を待たずして人件費を把握可能
従業員のマスタ情報を1ヶ月単位で管理できるほか、CSV形式で一括して取得/編集/登録も可能
社員やバイト、パートといった従業員の属性別にカレンダーを設定できるほか、まるめ・集計機能との連動も可能
登録されたシフトに基づいて、遅刻早退を自動で判定
売上や生産高、処理量などの成果を入力し、その成果と勤務実績を対比させて、折れ線グラフで表示
※引用元:ジョブカン勤怠管理 公式HP
(https://jobcan.ne.jp/)
タップすると各機能の説明が表示されます
リアルタイムでスタッフの勤務状況の確認や拠点ごとの勤怠管理が可能
直感的な画面操作で簡単にシフトを申請・作成が可能
出勤管理機能やシフト管理機能と連動し、複雑な休暇管理を簡単に実施
スマホやタブレットでも、打刻・閲覧・各種申請などが可能
スタッフやタスクごとの工数集計やデータ出力・分析が可能
スタッフの勤務状況を自動集することが可能
時間外労働状を一覧で確認でき、36協定超過がある際は自動アラートでお知らせ
画面上の言語は、英語、韓国語、スペイン語、タイ語、中国語(簡体字・繁体字)、ベトナム語への切り替えが可能
医療現場の勤務形態に合わせた運用が可能
※引用元:マネーフォワード クラウド勤怠 公式HP
(https://biz.moneyforward.com/attendance/)
タップすると各機能の説明が表示されます
日次勤怠、勤怠確認、分析レポート、拠点別打刻集計、カスタム自動集計(数値集計)
役職階層、ワークフロー経路、申請ワークフロー、代理申請ワークフロー、受信ワークフロー
異動予約(役職)一覧、異動予約(就業ルール)一覧
有給休暇の自動付与、有給休暇付与予定一覧、有給休暇管理簿
不正な打刻・打刻漏れ、許可されていない打刻、無効な勤務パターン
打刻ごとの丸め設定、出勤・退勤・休憩の丸め設定、勤怠項目ごとの丸め設定、日ごと・月ごとの丸め設定、未申請の丸め設定、シフト範囲外打刻の丸め設定
従業員データ、日次勤怠データ、有給休暇利用実績、休暇付与データなどのインポート
従業員データ、月別データ、出勤簿データ、出勤簿データ、1ヶ月のシフト表、時間帯別のシフト表などのエクスポート
シフト管理、操作権限設定、ワークフロー通知、マネーフォワード クラウド給与との連携
※選定基準:
・キンタイミライ:Google検索「勤怠管理システム」でヒットした55製品の内、本番開発前のプロトタイプ開発および導入後の無料調整を唯一行っているシステムとして選出(2023年5月16日調査時点)。
・ジョブカン勤怠管理:Google検索「勤怠管理システム」でヒットした55製品の内、必要な機能を選んで価格が決まる製品で、機能が200種類と最も多い (2023年5月16日調査時点)。
・マネーフォワード クラウド勤怠:Google検索「勤怠管理システム」でヒットした55製品の内、一元管理できるバックオフィス業務のシステムが最も多い(2023年5月16日調査時点)。
ここでは、勤怠管理システムを乗り換えるにあたってよくある3つの課題ごとに、それぞれどういう基準でシステムを選ぶべきかを解説いたします。
既存のシステムでは自社のルールに合った管理でができておらず、手作業が発生しているなど、今のシステムに課題を抱えている企業もたくさんいらっしゃることでしょう。ホテル、運輸・倉庫、小売り、飲食といった、一般的なオフィスワーカーとは異なる勤務体系の業種に多いようです。
また企業規模が大きくなればなるほど従業員の雇用形態や労働形態が複雑になる上、高いコンプライアンスを求められることから、大企業を中心に既存システムでは対応しきれなくなるケースも散見されます。
上記のような課題を抱えている企業に必要なのは、「高いカスタマイズ性」を持つ勤怠管理システム。既存システムの機能では解決できない以上、自社仕様に機能を開発/調整してもらうほかありません。
このようなシステムを導入するにあたっては、細かいヒアリングを行った後、エンジニアが機能を調整してくれるため、痒い所に手が届くシステムになるでしょう。その分、既存のシステムよりもコストがかかりますが、従業員規模1,000名~といった大企業であれば 費用感は合うはずです。
機能の充実した勤怠管理システムを入れてはみたものの、運用を始めてみるとあまり使っていない機能があることに気が付くケースです。複雑な機能を用いて厳密に管理を行うというよりかは、選び抜いた機能だけのシンプルで低コストなシステムに乗り換えたいとお考えの中小企業も多いでしょう。
従業員からも、管理者からも直感的に使えないとの声が上がったり、実際にエラーが頻出しているケースもあるようです。
上記のような課題を抱えている企業に必要なのは、「機能を選んでコスパ良く使える」勤怠管理システム。「出勤管理機能」「休日申請機能」だけで良い企業もあれば、「シフト管理機能」も欲しい企業もあるでしょう。
企業の規模や労務管理の方法などによって、欲しい機能は異なるのが普通。機能を厳選することで、従業員にとってもシンプルで使いやすく、経営者にとってもコスパの良いシステムとなるのです。
事業の拡大に伴って従業員は増えるものの、労務管理を行う人数は増えていかず、管理する現場では負担が増える一方。既存のシステムでは勤怠とその他バックオフィスシステムを別々に導入しているため、うまく連携できていないという課題を持つ企業もいらっしゃることでしょう。
ベンチャー企業などにおいては、上場を視野に入れてバックオフィス業務を一気に統制していきたいというケースもあるようです。
上記のような課題を抱えている企業に必要なのは、「バックオフィス業務を一元管理できる」勤怠管理システム。「勤怠管理」だけでなく「給与」「会計」「経費」「人事管理」など、複数のバックオフィスシステムを展開しているシステムから、自社が必要なシステムを組み合わせて乗り換えると良いでしょう。
当然連携することを前提に開発されている為「リアルタイムでの数値同期」などで税理士との連携を行いながら、より効率的にバックオフィス業務を遂行することが可能です。