勤怠管理システムへのAI活用が広がり、単純な打刻・集計だけでなく、シフト案の自動作成、異常な打刻の検知、問い合わせへの回答、長時間労働の予測などが可能になっています。人事担当者が毎月繰り返してきた確認作業を減らせる点が大きな魅力です。
一方で、「AI搭載」と表示されていても、できることや精度、利用条件は製品によって異なります。AIの結果を無条件に採用すると、不公平なシフトや誤検知につながることもあります。本記事では主要機能とメリット、導入時の注意点、製品比較の方法を具体的に解説します。
AIシフト作成は、従業員の希望、勤務可能時間、必要人数、スキル、連続勤務、休憩、法定休日、予算などを条件として、シフト案を生成します。担当者が一人ずつ表へ配置する作業を減らし、欠員や過員を見つけやすくします。
効果を高める鍵は、絶対に守る条件と調整可能な希望を分けて登録することです。法令や資格配置は必須条件、希望休や勤務回数の均等化は優先条件として重み付けし、AIが作った案を管理者が確認して確定します。
過去の勤怠パターンや勤務予定と比較し、退勤打刻の欠落、短時間での重複打刻、予定場所と異なる打刻、同じ端末からの連続打刻などを異常候補として抽出できます。全件を目視するより、確認対象を絞り込める点がメリットです。
ただし、異常値が直ちに不正を意味するわけではありません。AIは疑わしい記録を見つける補助役と位置付け、本人への確認、シフト変更、端末障害、応援勤務などの事情を調査してから修正や指導を行う必要があります。
生成AIやチャットボットを勤怠システムと連携すると、「有給休暇の残日数は」「打刻を忘れた」「育児時短の申請方法は」といった質問に、いつでも回答できます。画面への案内や申請の下書きまで支援する製品もあります。
自社規程と本人の権限に基づく回答ができるかが重要です。一般論だけを返すボットでは誤案内の可能性があるため、回答根拠の規程名・更新日を表示し、個別判断が必要な質問は人事窓口へ引き継ぐ設計にします。
勤怠実績、シフト、繁閑、受注量などのデータを分析し、月末の残業見込みや欠員リスクを予測する機能もあります。上限に近づいてから警告する従来型のアラートより早く、応援配置や業務分担の変更を検討できます。
予測を実務へ生かすには、誰に、いつ、どの基準で通知するかを決めておきます。予測値だけを表示するのではなく、超過の可能性が高い部署、主な要因、推奨される確認項目を管理者へ示せると行動につながります。
シフト作成、未打刻者への連絡、申請内容の確認、問い合わせ回答は、件数が増えるほど人事や現場責任者の負担になります。AIが案の作成と確認対象の抽出を担えば、担当者は例外対応や従業員との調整に集中できます。
削減効果は作業時間と差戻し件数で測定すると明確になります。導入前後でシフト作成時間、締め処理時間、問い合わせ件数、修正件数を比較し、AI利用料や初期設定にかかった工数を含めて費用対効果を評価しましょう。
時間外労働、休日、連続勤務、勤務間の休息、休憩などを人が個別に確認すると、月またぎや急なシフト変更で見落としが起こりがちです。AIやルールエンジンが予定と実績を常時確認すれば、問題が確定する前に気付けます。
大切なのは、警告後の是正フローまで自動化することです。本人と上司への通知、理由入力、シフト変更、上位承認、人事の確認を一連のワークフローにし、アラートが放置された場合は再通知やエスカレーションを行います。
勤務回数、夜勤回数、休日希望、スキル配置などを同じ基準で評価すれば、特定の従業員へ負担が偏る状態を把握できます。担当者の経験だけに依存せず、なぜその配置になったかを条件に沿って説明しやすくなります。
ただし公平の定義は職場ごとに異なります。従業員と合意した評価軸をAIへ反映することが必要です。回数の均等だけでなく、育児・介護、健康上の配慮、本人希望、習熟機会なども考慮し、定期的に偏りを検証します。
直行直帰、応援勤務、端末の故障、急なシフト変更は、通常と異なるためAIが異常と判定する可能性があります。反対に、過去のパターンに似た不正を見逃すこともあり、検知率が100%になるわけではありません。
AIの判定だけで懲戒や不利益な扱いを決めないルールが不可欠です。判定理由を確認し、本人から事情を聴き、客観記録と照合する手順を定めます。誤検知の事例は学習やルール調整へ戻し、精度を継続的に改善します。
勤怠データは行動履歴を含み、顔認証や指紋認証を使う場合は、より慎重な管理が必要です。利用目的を明確にし、収集する項目を必要最小限に絞り、保存期間、アクセス権、委託先、削除方法を確認します。
製品選定では、暗号化・多要素認証・操作ログ・権限分離を確認しましょう。AI学習に自社データが使われるか、国外へ保存されるか、契約終了後に削除されるかも重要です。従業員へ分かりやすく説明し、社内規程を整備します。
シフト案や異常検知の理由が分からないと、従業員から疑問が出ても説明できません。どのデータを使い、どの条件を優先し、誰が最終決定したかを記録できることが、AIを労務管理に用いるうえでの信頼につながります。
モデルの出力と人による修正を履歴に残すことで、偏りや精度を検証できます。法改正や就業規則の変更時には、参照する規程とルールを更新し、古い条件のまま判定が続かないようバージョン管理を行いましょう。
シフト作成を短縮したいのか、打刻漏れを減らしたいのか、問い合わせを自動化したいのかで必要な機能は異なります。「AIがある製品」を探す前に、対象業務、現在の工数、起きているミス、改善目標を整理します。
目的に必要なデータが十分に蓄積されているかも確認してください。希望シフトや必要人員が紙にしかない場合、まずデータ化が必要です。マスタの表記揺れや未打刻が多ければ、AI導入前にデータ品質を整えます。
AIが優れていても、複雑な就業規則、変形労働時間制、フレックス、時短、テレワーク、休暇、給与連携に対応できなければ運用できません。打刻、集計、申請、アラート、帳票、API、サポートを含めて比較しましょう。
AI機能の提供範囲と追加料金を実画面で確認することも大切です。標準機能かオプションか、利用人数や質問回数に上限があるか、自社規程の登録支援があるか、精度改善の費用は誰が負担するかを見積書で明確にします。
全社導入前に、課題が明確で協力を得やすい1〜2部門で試験運用します。現行手順とAI利用手順を並行させ、作業時間、欠員、修正件数、誤検知率、従業員の満足度などを一定期間測定します。
採用基準と中止基準をPoC開始前に決めると、印象だけで判断せずに済みます。精度が不足した場合にルール調整で改善できるか、現場負担が増えていないか、個人情報管理に問題がないかを確認してから対象を広げましょう。
AI搭載の勤怠管理システムは、シフト案の自動生成、打刻異常の検知、チャットボットによる問い合わせ対応、残業予測などを通じて、人事と現場管理者の反復作業を減らします。特に、確認対象を絞り込み、問題が起こる前に通知できる点が有効です。
ただし、AIは最終決定者ではありません。自社のルールと良質なデータを整え、判定理由を確認し、人が最終判断する運用が必要です。目的を明確にして基本機能とAI機能を比較し、小規模なPoCで効果・精度・安全性を検証してから展開しましょう。
ここでは、勤怠管理システムの導入にあたってよくある3つの課題ごとに、それぞれオススメのシステムを紹介します。
※引用元:キンタイミライ公式HP
(https://kintaimirai.jp/)
タップすると各機能の説明が表示されます
「時間帯ごとの要員数」と「人件費予算」を同時に確認しながら、シフトの登録・調整を実施
1ヵ月60時間を超える時間外労働について、代替休暇を取得
指定した起算日に基づき、4週4休のチェックを実施し、必要に応じて休日出勤を割り当て
社会保険・36協定・長時間労働に関して、指定したルールに基づきアラート
振替出勤が発生してから指定期間が経過すると、休日出勤の割増賃金対象の時間数として自動精算
その企業固有の集計方法をきめ細かに設定し、集計を自動化
集計結果を含んだ出勤簿をPDF形式で出力
日々の勤務実績に基づく人件費を計算し、締め日を待たずして人件費を把握可能
従業員のマスタ情報を1ヶ月単位で管理できるほか、CSV形式で一括して取得/編集/登録も可能
社員やバイト、パートといった従業員の属性別にカレンダーを設定できるほか、まるめ・集計機能との連動も可能
登録されたシフトに基づいて、遅刻早退を自動で判定
売上や生産高、処理量などの成果を入力し、その成果と勤務実績を対比させて、折れ線グラフで表示
※引用元:ジョブカン勤怠管理 公式HP
(https://jobcan.ne.jp/)
タップすると各機能の説明が表示されます
リアルタイムでスタッフの勤務状況の確認や拠点ごとの勤怠管理が可能
直感的な画面操作で簡単にシフトを申請・作成が可能
出勤管理機能やシフト管理機能と連動し、複雑な休暇管理を簡単に実施
スマホやタブレットでも、打刻・閲覧・各種申請などが可能
スタッフやタスクごとの工数集計やデータ出力・分析が可能
スタッフの勤務状況を自動集することが可能
時間外労働状を一覧で確認でき、36協定超過がある際は自動アラートでお知らせ
画面上の言語は、英語、韓国語、スペイン語、タイ語、中国語(簡体字・繁体字)、ベトナム語への切り替えが可能
医療現場の勤務形態に合わせた運用が可能
※引用元:マネーフォワード クラウド勤怠 公式HP
(https://biz.moneyforward.com/attendance/)
タップすると各機能の説明が表示されます
日次勤怠、勤怠確認、分析レポート、拠点別打刻集計、カスタム自動集計(数値集計)
役職階層、ワークフロー経路、申請ワークフロー、代理申請ワークフロー、受信ワークフロー
異動予約(役職)一覧、異動予約(就業ルール)一覧
有給休暇の自動付与、有給休暇付与予定一覧、有給休暇管理簿
不正な打刻・打刻漏れ、許可されていない打刻、無効な勤務パターン
打刻ごとの丸め設定、出勤・退勤・休憩の丸め設定、勤怠項目ごとの丸め設定、日ごと・月ごとの丸め設定、未申請の丸め設定、シフト範囲外打刻の丸め設定
従業員データ、日次勤怠データ、有給休暇利用実績、休暇付与データなどのインポート
従業員データ、月別データ、出勤簿データ、出勤簿データ、1ヶ月のシフト表、時間帯別のシフト表などのエクスポート
シフト管理、操作権限設定、ワークフロー通知、マネーフォワード クラウド給与との連携
※選定基準:
・キンタイミライ:Google検索「勤怠管理システム」でヒットした55製品の内、本番開発前のプロトタイプ開発および導入後の無料調整を唯一行っているシステムとして選出(2023年5月16日調査時点)。
・ジョブカン勤怠管理:Google検索「勤怠管理システム」でヒットした55製品の内、必要な機能を選んで価格が決まる製品で、機能が200種類と最も多い (2023年5月16日調査時点)。
・マネーフォワード クラウド勤怠:Google検索「勤怠管理システム」でヒットした55製品の内、一元管理できるバックオフィス業務のシステムが最も多い(2023年5月16日調査時点)。
ここでは、勤怠管理システムを乗り換えるにあたってよくある3つの課題ごとに、それぞれどういう基準でシステムを選ぶべきかを解説いたします。
既存のシステムでは自社のルールに合った管理でができておらず、手作業が発生しているなど、今のシステムに課題を抱えている企業もたくさんいらっしゃることでしょう。ホテル、運輸・倉庫、小売り、飲食といった、一般的なオフィスワーカーとは異なる勤務体系の業種に多いようです。
また企業規模が大きくなればなるほど従業員の雇用形態や労働形態が複雑になる上、高いコンプライアンスを求められることから、大企業を中心に既存システムでは対応しきれなくなるケースも散見されます。
上記のような課題を抱えている企業に必要なのは、「高いカスタマイズ性」を持つ勤怠管理システム。既存システムの機能では解決できない以上、自社仕様に機能を開発/調整してもらうほかありません。
このようなシステムを導入するにあたっては、細かいヒアリングを行った後、エンジニアが機能を調整してくれるため、痒い所に手が届くシステムになるでしょう。その分、既存のシステムよりもコストがかかりますが、従業員規模1,000名~といった大企業であれば 費用感は合うはずです。
機能の充実した勤怠管理システムを入れてはみたものの、運用を始めてみるとあまり使っていない機能があることに気が付くケースです。複雑な機能を用いて厳密に管理を行うというよりかは、選び抜いた機能だけのシンプルで低コストなシステムに乗り換えたいとお考えの中小企業も多いでしょう。
従業員からも、管理者からも直感的に使えないとの声が上がったり、実際にエラーが頻出しているケースもあるようです。
上記のような課題を抱えている企業に必要なのは、「機能を選んでコスパ良く使える」勤怠管理システム。「出勤管理機能」「休日申請機能」だけで良い企業もあれば、「シフト管理機能」も欲しい企業もあるでしょう。
企業の規模や労務管理の方法などによって、欲しい機能は異なるのが普通。機能を厳選することで、従業員にとってもシンプルで使いやすく、経営者にとってもコスパの良いシステムとなるのです。
事業の拡大に伴って従業員は増えるものの、労務管理を行う人数は増えていかず、管理する現場では負担が増える一方。既存のシステムでは勤怠とその他バックオフィスシステムを別々に導入しているため、うまく連携できていないという課題を持つ企業もいらっしゃることでしょう。
ベンチャー企業などにおいては、上場を視野に入れてバックオフィス業務を一気に統制していきたいというケースもあるようです。
上記のような課題を抱えている企業に必要なのは、「バックオフィス業務を一元管理できる」勤怠管理システム。「勤怠管理」だけでなく「給与」「会計」「経費」「人事管理」など、複数のバックオフィスシステムを展開しているシステムから、自社が必要なシステムを組み合わせて乗り換えると良いでしょう。
当然連携することを前提に開発されている為「リアルタイムでの数値同期」などで税理士との連携を行いながら、より効率的にバックオフィス業務を遂行することが可能です。